❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
けれど結局すべては光秀の掌の上であり、このまま何事もなかったようになど眠れる筈もない。
「無論、お前が嫌ならば無理強いはしないが、どうする」
金色の眸が誘うような色を灯して妖しく光る。妖艶で危険なその色はダークオレンジのブラケットに照らされ、凪を何処までも惹きつけた。答えなど、そんなものはとうに決まっている。綺麗な弧を描く男の唇へ凪からひとつ口付けを贈り、少しだけ残っていたベルベットハンマーを今度は凪が応えるように飲み干す。目元や首筋が火照り、濡れた眸が光秀だけを映した。
「……嫌じゃない、です。全部知ってるくせに」
恥じらいを孕んだその声が届けられると、光秀が微かに布擦れの音を立てて凪を横抱きにする。慣れた浮遊感に両腕を伸ばし、男の首裏へとそれを回した。そうして愛しい妻を腕に抱いた男は、穏やかな静寂に満ちる中へ足を踏み出し、特別な夜に溺れる為、寝室へと向かったのだった。