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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



カウンターへ両腕を置き、凪が正面に居る光秀の方へと軽く身を乗り出した。楽しそうな表情で面持ちを緩めている彼女を見やり、男もまた口元を綻ばせる。冊子には写真付きで完成されたそれぞれのカクテルが紹介されており、カクテル名とレシピが記されているが、生憎と光秀には文字、まして英語などは読める筈もない。よって、完全に写真の見た目で選ぶ事になる。

(光秀さん、何選んでくれるのかな……結構色で選んでくれてるから、ブラックルシアンとか……?)

一部を除き、カクテルは案外飲みやすい味わいに対してそこそこ度数が高い印象だが、杯数を多くしなければ問題ないだろう。幸い、そこまで二日酔いする質ではない為、調子に乗り過ぎなければ問題ない筈だ。光秀が果たしてどんなものを選んでくれるのか、何処となく浮足立ったような感覚で待っていると、不意に男の眼差しがとあるページで止まった。

「ではこれを」
「ベルベットハンマー……?飲んだ事ないですね。でも美味しそう!」
「味はまるで見当がつかないが、この柔らかそうな色合いがお前によく似合いだ」
「てっきり黒系のカクテル選ぶのかなって思いました」
「たまには趣向を変えるのも悪くないと思ってな」

光秀が開いたページには、ベルベットハンマーという文字と共に、乳白色系の見た目的にも実にクリーミーそうなカクテルが載っていた。どんな理由であれ、光秀が自分の為にと選んでくれたものならば嬉しいに決まっている。面持ちを綻ばせた彼女を前に、頬杖をつき直した男が片手を凪の頬へと滑らせた。優しくふんわりしたその様は、何処かこの頬の手触りにも似ている気がする。他にもブルーやオレンジ、バイオレットなど様々な彩りのカクテルが載っていたが、ひと目で印象づいたのがこれだったという訳だ。

「じゃあ光秀さんが選んでくれたカクテル、早速作ってみますね」
「ああ」
「えーとレシピは……あ、このカクテル、光秀さんに作ったものと同じ種類のお酒が入ってるみたいです」
「ほう…?」

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