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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



端正な男の容姿がいっそう際立つ様に胸が淡く染まった。どんな場所に居ても絵になる、などと惚気に近い感想を抱いていた彼女であったが、ふと我に返った様子で支度を始めた。開いた冊子を邪魔にならない場所へ置き、カクテル作り用の道具を取り出す。銀色のシェーカーのボディにロックアイスと水を入れ、氷の角を取った後で水を切った。こうする事で中の氷が水っぽくならない上、ボディが良く冷えるのだという。

「珍妙な銚子だが、それで酒を注ぐのか」
「今からここにお酒……カクテルの材料を注いでいくんですよ。手順を見ながらの、完全に見様見真似ですけどね」
「一人で居る間、そこまでもてなしの仕方を考えていたとはな」
「だって日付が変わったら、光秀さんの生まれ日ですから」

当然シェーカーを初めて目にする光秀が、不思議そうに凪が用意しているものを眺める。シェーカーの準備を終えた後、冊子に従ってストレーナーとトップを順番にはめた。子供達との湯浴み中に画策したらしい彼女へ、光秀が感心した様子で零す。ちらりとデジタル時計を確認すれば、時刻は二十二時半を少し過ぎた頃であった。

「普通にお酒出す事も考えたんですけど、光秀さんに少しでも喜んで欲しくて」
「役得だな。お前に甲斐甲斐しくされる上、独り占め出来るとは」
「二人には内緒ですよ?」
「ああ」

様々並んだボトルの中からラムの瓶を取り出し、冊子に書かれているレシピ通りの分量をメジャーカップに入れる。シェーカーの中にそれを入れた後、今度はホワイトキュラソーを適量量り、更にシェーカーへと注いだ。最後はスクイーザーでレモンを搾ってレモン汁を加えた後、蓋を閉める。素人がシェーキングするのは如何なものかと思うが、身内で楽しむものという事でまあご愛嬌といったところだろう。

(これでシェーキングしてカクテルグラスに注いだら完成……!)

シェーカーを持ち、トップとボディの底にあてがった指先がひんやりする程度まで振れば、中のカクテルが程よく冷えた事の目安になるらしい。

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