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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



曰く、どのような世でもどんな危険が日常に潜んでいるか分からない、との事だ。光秀に深く想われている事実を嬉しく思いながら、言われた通り大人しくその場で待つ。そうしている間にもホテルの従業員がワゴンに乗せて運んで来た品々を受け取り、会計と共に光秀がしっかりとチップを渡していた。

ちなみにチップについては以前現代へ来ていた折にも誰に教えられるでもなく普通に渡していた事から、乱世で既に習慣づいているのだろう。ホテルの従業員が立ち去り、運ばれて来た料理はひとまずバーカウンターの上へと置いた。本来なら恐らくセッティングまでしてくれるのだろうが、そこは光秀が遠慮したらしい。曰く、無防備な妻の寝間着姿を他の男に見せる訳にはいかない、との事だ。だが、偶然とはいえバーカウンターの上に置いてくれたのは実にお誂(おあつら)え向きというべきか。ドアがオートロックで施錠された後、凪がソファーから立ち上がってカウンターの方へと向かう。

「じゃあ光秀さん、こっちへどうぞ」
「肴を頼んでいた事といい、既に仕込みは上々という訳か」
「その辺りは私の腕にかかってますね」
「ほう、それは楽しみだ」

色の濃い木材を用いて作られたバーカウンターの正面には高さのある背凭れつきの丸い椅子が三つ程置かれている。その内のひとつ、中央の席へ光秀を凪がいざなった。酒の肴を予め頼んでいた事まではさすがの光秀も見抜けなかったのだろう、可笑しそうに面持ちを緩めて促されるままに席へつく。余計な飾り気の無いシンプルなカウンターは却って高級感を醸し出しており、室内にも自然に馴染んでいる。席から見て正面には大きな棚が壁沿いに設置されており、そこに磨き上げられたカクテルグラスなどやアルコールの瓶が置かれていた。

「夜なのでおつまみは軽めのものにしておきました」
「臣はともかく、鴇が関心を示しそうなものばかりだな」
「そうですね、二人でも絶対食べ切れないですし、臣くん鴇くんにも冷蔵庫に入れて残しておきましょう」
「ああ」

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