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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



掌大の大きさである長方形のカードキーを見せ、凪が扉をカチャリと軽く開けた。再びそれを閉ざし、キーを壁際のキーケースへ入れた様を見て、光秀は腕を胸前で組みながら片手を顎へあてがう。得心した様子で頷いた彼の発言に首を傾げた凪を前に、男は口元へ緩い笑みを浮かべた。

「招かざる客を追い返せる。俺に小言という名のお節介を焼きに来た秀吉も、開かない戸の前では引き返さざるを得ないだろう」
「……それはさすがにちょっと可哀想です」
「おやおや、恋仲の俺よりも秀吉を案じるとは少々妬けるな」
「もう、何言ってるんですか。それより、お部屋の使い方教えますね」
「ああ」

部屋へ入った時に自然と解かれた手を再び凪が握って来る。そっと繋ぎ、部屋の中を先行して歩く彼女の後に続きながら、光秀は室内を改めて見回した。窓の外は既に朝陽が少しずつ昇り始めていて、乱世とはまったく異なる町並みが広がっている。見た事もない建造物から、馴染みのある気配を漂わせる寺や神社も遠目に確認出来た。町を区切る格子状の通りは、以前足利義昭の元に居た時にもよく目にしていたものと近しいが、光秀が知る景色とは当然ながら程遠い。調度品も見た事のないものばかりであり、シャワールームへ案内された時に試しにと凪が軽く湯を出した時にはさすがに目を瞠った。暖かな湯が勝手に出て来るとは驚きだ。まだ凪が光秀の御殿に住んで間もない頃、桶だと髪が洗いにくいと零していた事を思い出し、今更ながらに納得した。

「……と、こんな感じで必要そうなものは説明したんですけど、大丈夫そうですか?」
「そうだな、大方は把握した」
「いつもながら思うんですけど、凄いですよね。私は乱世の生活に慣れるの、凄く時間かかったのに」

最低限必要だと思う設備について説明をした後、部屋の中央にある大きなソファーへ腰掛けながら凪が問いかけて来る。

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