❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「お前が嫌でないなら問題はないな。では彼方殿、一部屋借りるぞ」
「どうぞごゆっくりー」
「また明日……じゃなくて、朝にね!」
「うん、ゆっくり休んでー」
凪へそっと囁きかけた後、視線を彼方へ向けて告げた光秀は悠然と口元へ笑みを浮かべる。もはや決定事項であるかの如く告げた男へ彼方が緩い挨拶を紡いだ。光秀に手を引かれながら歩き出した凪が友人へ振り返り、声をかける。なんだかんだ色んな事があった為、遅れてやって来た疲労を感じ、頷いた彼方も欠伸を噛み殺しながら自らが泊まる部屋へと身を翻したのだった。
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最上階フロアに用意されている部屋は全部で八部屋で、いずれも最高クラスのハイスイートルームといった位置付けだ。部屋へ立ち入ったと同時、正面に広がる全面の大きな窓からは京都の夜景が一望出来、大きなジャグジー付きの広いバスタブが設置されたバスルームと、シャワーブースが別々に設置されている。洗面所とトイレ、キッチンにワインクーラーなど、あれやこれやと至れり尽くせりな造りになっているお洒落且つモダンな内装は、凪の乙女心を大いに喜ばせた。乱世で過ごしてからというもの、和風の豪勢な内装は割と安土城で見慣れたものだが、こういった洋室の豪華な様を目にするのはまた異なったテンションになる。寝室は二部屋あり、それぞれにはキングサイズの柔らかそうなベッドと、サイドテーブル、各種アメニティも完備されている為、身ひとつで泊まってもまったく問題ない程である。
「凄く広いお部屋ですね…!」
「ああ、これは驚いたな」
扉を締めるとオートロックがかちゃりと音を立ててかけられた。その音を耳して咄嗟に背後を見やり、双眼を瞬かせている光秀へ笑いかけた凪は、縦型のドアノブを軽く引いて見せる。
「中からは開くけど、外からはこのカードキー…えーと鍵がないと開けられない仕組みなんですよ」
「ほう…?御殿の入り口に設置すると勝手がいいだろうな」
「例えば?」