❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
「私、これからもたくさん文書きますね。光秀さんが乱世で一番優しい人だって皆に知ってもらう為に」
「では俺もそうします。自慢の父だと方方(ほうぼう)へ知らしめなくては」
「ときもいっぱいおえかき、する!」
凪に次いで兄弟も笑顔のまま声を上げた。これから先、光秀の文箱は溢れんばかりの愛ある文や絵が更に詰まって行くのだろう。到底ひとつなどでは足りなさそうだと思う反面、それを喜びに感じている自身の存在を改めて思い知らされ、光秀は眉尻を僅かに下げて家族にしか見せない穏やかな表情で笑ったのだった。
それから程なく、体力の限界が訪れたのだろう光鴇が目を頻(しき)りにこする様を見て、子供達を寝かせるべく父がうつらうつらしている幼子を抱き上げた。子供達に使わせる方の寝室へ揃って向かい、大きなベッドへ光鴇を下ろしてやる。そうすれば、初めて体験する寝具の柔らかさに目を丸くし、眠気に襲われていた筈の幼子がはっとした様子で起き上がった。
「おやおや、急に水を得た魚のようになったな」
「なんかしとね、やわらかい…!」
「ベッドって言うんだよ。広いから大丈夫だと思うけど、転がって端から落ちないようにね」
「そふぁーとやらとはまた違う柔らかさなのですね……凄い……」
ある程度反応を予想していたらしい光秀がくつりと喉奥を鳴らして笑う。ころりと寝返りを打った光鴇が丸くした目をそのままに、柔らかさを堪能するようクイーンサイズのベッド上を転がった。両手をベッドの上につき、軽く押した光臣が関心と感動が混ざり合った調子で零す。何度もぐっぐっとそれを押している様は実に微笑ましい。
「私達は隣の部屋なんだけど、二人で平気かな?」
「大丈夫です。鴇も今はこうしてはしゃいでますけど、すぐにまた眠くなると思うので」
「まくら、やわらかい。おふとん、あったかい!」
「ああ、騒いで今度こそ体力を使い果たす様が目に見えている」
「ごろごろたのしい…!」