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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第4章 掌中の珠 前編



(謎な人物って……でも確かに光秀さんらしいかも。そういう痕跡、残しそうにないもんね。それでも信長様に次いで二位になれるなんて凄い……!)

必要以上に自身の情報を漏らさず、残さない。光秀の徹底ぶりを見ていれば納得せざるを得ない結果とも言える。先程まで靄がかかったような心地だった凪が、嬉しそうに面持ちを綻ばせた。数多存在する武将達の中で、後世の者達から好意的に見られているという事実が、純粋に嬉しい。情報が少なくとも、きっと光秀の意思は何かの形で伝わっている、そう思えば言いようのない喜びが胸を湧かした。確固たる信念を抱く者には、それへ惹かれる者達が自然と集まって来る─────その結果は五百年の時を越え、光秀の信念が人々を惹き付けた証明のように思えた。

「ただ、ひとつだけ確固たる情報がある、とも言われていましたよ」
「な、なに……?」

付け加えるような光臣の言葉に、緊張感を過ぎらせた凪が問いかけた。口元へ穏やかな笑みを浮かべている事から、あまり悪い内容ではないだろうが、心配なものは心配だ。

「臣」

期待と不安が綯い交ぜになった様子の凪を余所に、父がふと嗜めるような調子で長男の名を呼ぶ。別段本気で怒っている訳ではないと雰囲気で察している少年は、父の柳眉が僅かに寄った事などお構いなしである。涼やかな面持ちで金色の視線を流し、口元の笑みを邪気無く深めた。

「俺達だけが知って、母上だけ知らないのは不公平ですから」
「やれやれ、聞き分けのないところは一体誰に似たのやら」
「恐らくどちらにも、でしょうね」
「……?と、ときもにてるよ!」

光臣の言い分に対し、仕方なさそうに吐息をひとつ父が零す。話の内容にまるでついて行けていない幼子が光臣と光秀を見比べ、慌てて自己主張した。仲間外れは嫌だと言わんばかりのそれに凪が小さく笑い、幼子の頭を撫でてやる。そうして好奇心が押さえられない眼差しを長男へ向けると、彼は何処となく誇らしそうな、そして嬉しそうな面持ちで告げた。

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