❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「時を越えようが越えまいが、お前に語って聞かせる事なんざそうそう変わらねえ」
「ねえ凪、あんたの彼氏と秀吉さん、あんなだけど大丈夫?」
「うん、割といつもの事だから平気。いざって時は凄く息ぴったりだから」
光秀と秀吉のいつものやり取りを前に、凪が小さく頷いた。彼方とて本気でやり合っているとは思っていないが、一般的な史実を知る身としては色々と心配である。ひとまず気を取り直すようにしてちらりと壁にかけられていたクリスタル製の時計を見れば、既に夜中の四時を指そうとしていた。
「やば、もう四時じゃん。さすがに一回寝よっか。朝ゆっくりめのご飯食べて、それからどうするか考えよ。私も帰るの面倒だから、このフロア泊まってくわ」
「え、もうそんな時間!?ワームホールボケしてて全然感覚なかったよ」
「一回寝ればリセット出来るでしょ。取り敢えず皆、それぞれ好きな部屋使って。部屋はオートロックになってるから…ってもわかんないか。佐助くん、武将さん達のお部屋サポートしてくれる?」
「勿論。一通りの事は教えるつもりだから、その辺りは任せて」
窓の外を見ると、初夏である所為か既に東の空が薄っすらと明るくなって来ている。このまま寝ずに一日を過ごす訳にもいかない為、一度お開きにする事を提案すると、凪も驚いた様子で時計を見上げた。時計という習慣がすっかり抜け落ちてしまっていた為、あまり気にしていなかったが、さすがに彼方にも休んで欲しいと考え、小さく頷く。武将達が使用する部屋と一通りの設備の説明などは佐助が行ってくれるらしく、彼方がおもむろに立ち上がった。
「そんな訳で解散!また明日……って言っても、もう今日だけど、起き次第集合って事で」
「分かった。じゃあお部屋借りるね、彼方」
「うんうん、どうぞー」
ひとまずは休む事を優先すべく、面々もソファーから腰を上げる。佐助が武将達を引き連れて部屋などの説明に向かったのを見送った後、凪もおもむろに泊まらせてもらう一室へ足を踏み出そうとした刹那、ふと隣に居る光秀を見上げ、双眼を瞬かせた。
「光秀さん、説明聞きに行かなくていいんですか?」
「お前が教えてくれれば済む事だ。よもや俺に独り寝をしろ、などとつれない事は言わないだろう?」