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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



豊臣秀吉と明智光秀、一般的な歴史としても何かと因縁が囁かれる二人を交互に見やった後、彼方がなんとも言い難い微妙な面持ちで頷いた。

「か、彼方!それは誤解だよ!秀吉さんと光秀さんが仲良しな事が証明っていうか…」

例の歴史的大事件、本能寺の一件を実際に体験し知っている凪としては、現代で光秀が裏切り者扱いされている事を本人に知られたくないという気持ちもあり、慌てて首を振って話題を変えようとする。

「仲良しではない」
「仲良しではないな」

「めっちゃハモってるじゃん。仲良しか」

凪の言葉に対し、光秀と秀吉の言葉が綺麗に重なった。先程まで訝しんでいた彼方もけたけたと笑い、一変した表情で片手をひらりと振って見せる。

「ごめんごめん、何か凪を取られちゃったような気がしてつい意地悪言っちゃった。ぶっちゃけ私達が学んでる歴史なんて、嘘か本当かも分からないものだし、五百年前から来た武将さん達が目の前に居るなら、それが真実ってやつでしょ。イケメン彼氏ゲットおめでと、凪」
「え!?う、うん…ありがと。ちょっと色々気後れしちゃうけどね」
「分かる分かる。彼氏がイケメンだと大変だよねー」

そもそも凪が選んだ相手へ云々と文句を付けるつもりはない。バスのくだりから光秀を観察していたが、光秀が凪を大切に扱っている事は十分分かっていた。これ以上外野が口出しする事ではないと判断したのか、からりと笑ってグラスを手に取り、ストローで冷えたアイスティーを飲む。

「先程から気になっていたが、【いけめん】とは何だ」
「ええっ!!?」
「……何故そんなに驚いている?」

彼方の誤解が解けて安堵の息を漏らした凪へ、ふと光秀が問いを投げかけて来た。そういえばイケメンについては一切説明せず、割と高頻度で使ってしまっていた事に気付き、凪が問いに対してつい頓狂な声を上げる。意味を伝える事は簡単だが、如何せん何となく恥ずかしい。つい光秀を見上げて大きく眼を見開き、耳朶をじわりと紅くしながら、ぱちぱちと幾度か双眼を瞬かせた凪を見つめ、光秀が首を緩く傾げた。

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