❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
以前、可愛いと言われても男は喜ばないといった話をした事のある凪が苦笑した。あからさまに眉根を寄せている家康を見つめていた彼方を余所に、佐助が眼鏡のブリッジを押し上げて告げる。
「デレるとは、異性に対して甘くなったり優しくなったりする事です。家康さんはツンデレ属性なので、デレの部分が凪さんに対して多く出てしまうんだと思います」
「サポートありがとう佐助くん」
「つんとかでれとか、五百年後の日の本は妙な言葉ばっかりだね。あと、別に凪に対して甘いとか、そんなんじゃないから」
「はいはい、分かったよツンデレ家康くん」
佐助のきっちりとした説明に対し、彼方が片手を振って礼を述べた。飛び交う未知の言語は、以前凪が口にしていた【テンション】よりもとらえどころがなく、いまいち理解に及ばない。溜息を零して告げた後、付け加えるようにちらりと凪を一瞥して補足を加えるも、佐助も彼方も妙なところで勘がいい為、まったく相手にはされなかった。家康が予想以上にいじられた事に苦く笑った凪は、気を取り直して三成へ視線を向けた。
「家康の隣は石田三成くん、凄く頭が良くて頼りになるんだよ」
「お褒めに預かり光栄です、凪様。改めまして、石田三成と申します。どうぞ三成と気軽にお呼びくださいね」
「へえ!君があの石田三成かあ…じゃあせっかくだから凪とおそろで三成くんって呼ばせてもらうね。…ていうか家康くんと三成くんが並んで座ってるって、時系列平気?」
「彼方さん、そこは安心して欲しい。あと十数年は先の事だから」
「そう、なら良かった」
「一体何のお話でしょう…?」
天使の如き笑顔で三成が丁寧な所作のまま頭を下げる。先程から何処かずれた天然ぶりを発揮していた青年が、まさかの石田三成だと言うことを知り、些か驚いた様子でいた彼方がふと、三成の隣に座っている家康をちらりと見た。佐助がすかさず口を挟み、例の事件(関ヶ原の戦い)がまだ先である事を告げると、彼方は安堵した様子で頷く。