❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
凪や佐助、彼方が五百年後の現代からやって来た事を認識している二人の息子(光鴇は理解しているか怪しいが)も、少なからず現代に興味を抱いていると分かっていたから尚の事だ。
(光秀さんのお誕生日だって一年に一度きりな訳だし、今年は家族水入らずでお祝いしようねって臣くん鴇くんとも相談してたのに、私が抜ける訳にはいかないもんね。せっかく誘ってくれた佐助くんには悪いけど、次の機会があったらにしよう)
暫し悩んだ末、凪はやはり光秀の誕生日祝いを優先する事とした。顔を上げた彼女がふと佐助の方を見る。そうしておもむろに口を開こうとしたところで、佐助が告げた。
「差し出がましいようだけど、ひとつ提案がある」
「提案……?」
己の意思を告げる前に佐助へ言われたそれへ、凪が不思議そうに目を瞬かせた。光秀は凪の友人である彼が何を口にするのか、大まかな見当がついたらしく、無言のままに状況を静観している。
「もし光秀さんさえ良ければ、凪さん達家族四人で現代に行くっていうのはどう?」
「えっ、それってつまり……」
佐助の言葉へ微かに息を呑み、凪が双眸を丸くする。言いかけた言葉の先を予想して、一度頷いた現代人仲間が続けた。
「ああ、ワームホールが開く予定なのが神無月の三日、つまり光秀さんの生まれ日の前日だ。もし都合がつくようなら、二泊三日の光秀さん生まれ日祝い家族旅行in五百年後なんていうのはどうだろう」
「なるほど、凪の杞憂をすべて回収するという訳か」
「生まれ日祝い家族旅行…!」
(なにそれ、凄く素敵……!!)
要するに現代へも帰るが、そこに光秀の誕生日祝いと子供達を連れて行く事、すべてを引っくるめてしまえばいいという提案であった。光秀が微かに笑みを浮かべて告げる傍らで、凪が眸を輝かせる。乱世で祝う誕生日も捨てがたいが、現代ならばまた違った祝いの仕方が出来るだろう。子供達も喜び、光秀にも毎年とは異なる祝いを味わってもらう、一石二鳥どころか一石三鳥もある名案に感じられた。