❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
「要するに、ご都合主義みたいに不定期発生してもこれといった違和感がないって事かな」
「なるほど……」
ワームホール発生の兆しがあれば、光秀へ報告する事。以前交わした約束を、佐助はあれから何度も律儀に守ってくれていた。そして今回もそれを伝える為、わざわざ春日山からはるばる安土まで訪ねて来てくれたという訳だ。短期間で行って帰って来れる、何とも便利極まりないワームホール発生の兆しが確認出来たという事で、凪と光秀が感心した様子を見せる。ちなみに現在子供達は子供部屋で光忠と共に遊んでおり、この場には凪達三人しか居ない。
「佐助くんはどうするの?」
「俺は一度謙信様に休暇を貰って帰ろうかと思ってる。最新式の望遠鏡が出てるようなら、それも買って戻りたいしね。最近は兼続さんも一緒に天体観測してるから、どうせなら二台揃えようと思って」
「兼続さんも一緒に天体観測してるの……?何か可愛いね」
佐助は何度かワームホールが発生する度、現代に戻って最低限の必要物資を買い揃えた上で帰還しているとあり、今回もその為に向かうのだと言う。兼続と共に並んで望遠鏡を覗いている図を想像した凪が、ついつい微笑ましそうに笑って肩を僅かに揺らした。
「こら」
「っ……!!?」
ふと、ぴんと指先で耳朶を軽く弾かれる。びくりとあからさまに肩を揺らした凪が短く息を呑んだ。大きく眸を瞠ると、隣で微笑する男を見上げる。口元へ綺麗に弧を描いた光秀が金色の眸を眇めて、しっとりとした声で彼女の鼓膜を揺らした。
「他の男をいっときでも思い浮かべるとは、余程お仕置きをお望みらしい」
「お、お望みじゃないです……!」
「なら、ゆめゆめ気を付ける事だ」
「うう……」
痛々しい程真っ赤に染まった耳朶を片手で覆い、凪が眉尻を下げる。気恥ずかしそうな彼女の表情を目にした男が、満足げに口角を持ち上げて告げた。小さく呻いて二の句が紡げなくなった凪の唇が引き結ばれた様を見ると、佐助が何処となく微笑ましそうに表情をほんの僅かに綻ばせた。