❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第4章 掌中の珠 前編
明日から取る、計六日分の非番の為、こなさなければならない事があるとあって今日までは中々に多忙な日々を送っていた。
「母上、こっちは終わりましたよ。父上の荷造りをなさるなら、俺が用意しますけど」
「本当?ありがとう、じゃあ白い着流しと手拭いとか用意してもらえるかな」
「分かりました。そういえば、さっき稽古からの帰りに城内で父上とすれ違いましたよ。予定より早く帰れそうだって言ってました」
凪に言われた事を終えた光臣が、行動を先読みして申し出て来る。支度が滞るよりはと少年の提案を受け入れ、素直に甘える事にした凪がお願いすると、光臣が立ち上がって箪笥の方へと向かった。寝間着として身に付けている羽織と着流し、帯を手にした彼がふと思い出した様子で振り返って告げれば、凪が嬉しそうに表情を綻ばせる。
「良かった……出発ぎりぎりまで忙しかったらどうしようって心配だったんだよね……今日はゆっくり休んでもらわないと!」
「ここのところ、帰って来るのがずっと夜中でしたからね」
光臣は現在、慶次指南の元で城の訓練に参加させて貰っている。下城の折に光秀と行き合い、言伝を頼まれたのだった。何故凪達が家長である光秀の帰りを待ち侘びながらせっせと荷造りをしているのかというと、きっかけはつい半月程前、現代人仲間である佐助がこの御殿を訪ねて来た折まで遡る─────。
「……え、神無月の初旬にワームホールが開く兆し?」
「ああ、今回はかなり安定感のある数値だから確実に五百年後へ行く事が出来ると思う。しかも次に戦国時代へ戻って来れるのはその三日後、ちょっとした小旅行気分で気軽に行ける日数だ」
「ほう…?そこまで短い間隔で再びわーむほーるが開くとは、奇妙な事もあったものだな」
「乱世が史実とは異なった道を辿っている関係で、宇宙法則の原理に少なからず影響が出ているみたいです。ワームホールは強力な宇宙エネルギーの集合体ですから、法則に左右されて上振れする事も珍しくはありません」
「む、難しい……」