❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
むっと紅くなっている凪の頭を、隣に居る光秀がよしよしと慰めているのは、彼女に恋心を抱く家康としては複雑なものがあるが、些かむくれる凪はどうにも愛らしい。
(………かわい)
そんなこんなの話を交わしつつ、佐助は改めて彼方を見た。ある意味適応能力とコミュニケーション能力が高そうな彼女ならば問題なさそうなものだが、一応まとめておこうと眼鏡のブリッジを軽く押し上げる。
「という訳で彼方さん、信じて貰えたかな」
「どう?彼方……ってまあ、簡単には信じられないとは思うんだけどね」
「凪がそもそも嘘つくような子じゃないのは分かってるから、正直信じたいんだけど……自称武将さん達、なにか証拠になりそうなの持ってないの?何かこう…昔の書状とかさ」
佐助の言葉に加えて握り飯を食べ終えたらしい凪も首を傾げれば、彼方は難しい顔で唸りながらホットサンドを完食し、おしぼりで手を拭きながら首を捻った。信じたい気持ちは当然あるが、素直にうんとも頷けないのは当然だろう。やがて悩んだ末、彼方が武将の面々をぐるりと見回した。証拠になりそうなもの、と言われて面々は首を捻る。
「書状か、生憎と今は密書くらいしか持ち合わせがなくてな」
「そうかそうか、つまりまた良からぬ事を企んでたって訳だな。その密書とやら、今すぐここへ全て並べろ」
冗談か本気か、光秀が凪の頭から手を離して片手を自らの顎へあてがった。とんでもない告白を耳にし、秀吉が眉間を顰めながら光秀を軽く見据えるも、男は相変わらず飄々とした面持ちで肩を竦めるだけだ。
「やれやれ、皆の前に出してしまってはもはや密書と呼べないだろう。秘してこその密書というものだ」
「よく分かった。その話は後でじっくり聞かせてもらう。…それにしても書状か、俺は信長様から頂いた書状くらいしか…」
「織田信長からの書状…!?」
「おっと意外だ、食い付いたな」
取り合う気がまるでない光秀を相手に、秀吉がますます眉間の皺を深める。