❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「ん―…凪の格好は可愛いけど、隠し過ぎ。私どっちかって言うと出したい派」
「おやおや、随分と頓狂な事を言う娘も居たものだな」
両手で握り飯を持ち、それを食べている凪を見やった後、彼方は片手をひらひら否定するよう振る。確かに彼女の服装はとても可愛いが、この真夏には確実に適していない。生粋の乱世育ちな面々にとっては衝撃的過ぎる発言を耳にし、光秀が胸前で緩く腕を組んで瞼を伏せ、微笑を乗せながら告げた。光秀も彼方の格好には正直驚きはしたが、そもそも凪以外の女に興味がない為、あまり気に掛からないらしい。
「何言ってるの、自称明智光秀さん。凪だってこっちに居た時はこのくらい普通に出してたからね」
「………ほう?」
「う……、彼方程自信満々に出してないよ」
「自信ないとこはむしろ隠すと余計目立つの。自信ないって言う程小さい訳じゃないじゃん」
ちらりと光秀の視線が凪へ注がれた。びくりと小さく肩を揺らした凪が光秀の眼差しからそっと逃れるよう顔を逸らし、否定出来ない事実にぶつぶつと文句を言う。この時代に居る頃は、それが当たり前なのだから仕方ない。凪のコンプレックスを一通り知っている友人としては、さして気にする事ではないと思うのだが、相変わらず凪は胸が気になるらしい。さらりと何食わぬ顔で言った瞬間、凪がむっと言い返して来る。それと同時、握り飯を食べていた家康が耳朶を紅くしてむせた。
「ち、小さいって言わないで!」
「…っ、げほっ…」
「家康様、どうされたのですか?唐辛子が辛すぎたのでしょうか…今お茶をお持ち致しますね」
「余計な事するな、悪化するから」
むせた家康を案じ、三成がテーブルに置かれた緑茶の入ったグラスを取ろうと手を伸ばしかけるも、三成の壊滅的な不器用さを知っている家康が即座に止める。何とかむせたのを飲み下し、細い息を吐いてグラスを手にとった家康は、使い慣れないストローを使って冷えた緑茶を飲んだ。