❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
元々他人の評価を気にするような男ではない為、当然と言えばそうなのだろうが。二人のやり取りを家康と同じ半眼で見やり、片手をひらりと振った後、正面へ向き直る。
「というか言葉遣いと顔の綺麗な君」
「家康様の事でしょうか?」
「俺の言葉遣いが良く聞こえるなんて、お前も中々重傷だね」
「なんというかまあ…確実に三成の事だと思うぞ」
「うんうん、今不思議そうに首を傾げてる君の事だよ」
彼方が三成を指して声をかけると、彼は不思議そうに首を傾げて隣に座っている家康を見た。真っ赤な握り飯を無表情で食べる家康が淡々と告げると、家康の更に隣に座る秀吉が苦笑した。秀吉の言葉を肯定するよう何度か頷いた彼方が三成を真っ直ぐに見つめると、彼はきょとんとした様子で相手を見つめ返す。視線がぶつかり合った事を確認し、彼方が自分の頬の辺りを人差し指でとん、と軽く指した。
「ここ、ついてるよ」
「え?あ…申し訳ありません。姫飯(ひめいい)はあまり食べ慣れていないのです。いつも干し飯(ほしいい)ばかりでしたから」
「干し飯!!?今どき珍し過ぎじゃない!?」
頬の辺りに米粒がついている事を指摘すると、三成は気恥ずかしそうに指先で米粒を取って笑う。現代の世で干し飯発言が飛び出して来るとは思わず、彼方がつい突っ込んだ。彼方のテンポの良い突っ込みを耳にして、佐助はそっと今はこの場に居ないズッ友を脳裏に思い描く。幸村と彼方であればいい突っ込みコンビになりそうである。
「俺からしてみれば、姫飯を当たり前みたいに振る舞ってくれる事の方が驚きだけどな。それと彼方って言ったか?女がそんな風に無防備に肌を晒すんじゃない。凪を見習え」
農民の出自且つ、貧しい時代を長く生きて来た秀吉にとっては、見ず知らずの自分達にこれだけの白米を振る舞ってくれた事の方が衝撃である。しかしながら秀吉としては食事も然ることながら、彼方の服装が延々と気になっていたらしく、眉間に皺を深々と刻んでちらりと凪へ視線を流す。ぽかんとした彼方は、手にしていたホットサンドにかぶり付いて飲み込んだ後、凪へ振り返った。