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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第3章 世の中は九部が十部



「へえ、良かったね。俺じゃお前と感想を言い交わしたところで意見も合わないだろうし、次はこの本でも読んで研鑽(けんさん)積んだら」
「ご自分の実力を鼻にかけない謙虚さ……さすがは家康様です!お勧め頂いた書物もご助言の通りしっかり目を通させて頂きますね」
「お前人の話聞く気ないだろ」
「まあまあ家康くん…!そういえば凪がこの前、家康くんの事凄く優しいって力説してたよ」
「……!」

(………ほう?)

三成と家康の応酬を適度なところで止めに入った彼方殿が、凪の話題を切り出した。家康が三成に向ける嫌味が途端に止む。凪が薬学や調薬を師事した家康へ心を許している事は以前から知ってはいた。登城や下城の際、あの娘の口から家康の話題が出て来る事も珍しくはない。とはいえ、愛しい連れ合いの可愛い唇から他の男の名ばかりが出て来るというのは、些か面白くないというのも事実なのだが。

「家康くん、この前城内に迷い込んだ猫の怪我手当てして、暫く面倒見てあげたんでしょ?」
「……ああ、そういえばそんな事もあったね」
「小さな生き物にまでお心を砕かれるとは、家康様はやはりお優しい方です」
「人間だけじゃなくて、動物の治療もこなせるって凄いって凪が褒めてた」
「別に人も動物も、怪我なら対処は同じでしょ」

彼方殿から聞かされた凪の話に、家康が素っ気ない返しをしている。天邪鬼な家康の事だ、大方照れ隠しといったところだろう。その反応をさして気にした様子もなく、彼方殿が続けた。

「私達の故郷だと、人間と動物の医者は別々の分野として学ぶんだよ。獣医って言って、動物専門の医者が居るくらいだしね」
「それは素晴らしいです…!彼方様達の故郷は、あらゆる分野に精通した知識者が多くいらっしゃるのですね」
「動物の医者か。まあ馬や牛は貴重な移動手段や労働力だし、傷病を診てくれるならいいかもしれないな」

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