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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第3章 世の中は九部が十部



「やはり新しい書物だったのですね、道理で見た事の無い内容だと思いました。地形把握は戦術の基本ですし、このように新しく情報が書き換えられるのは大変助かります」

(確かに興味深い表題だ)

信長様は天下布武に向け、次は中国地方の統治を視野に入れておられる。あの辺りは毛利氏の領地であり、余所へ情報が流れ難い事でも知られている地域だからな。事前に知識を蓄えておかない手はない。手元にある書物へ視線を落としながら、元々調べていた小国近辺の情報を頭に叩き込んでいく。それなりに必要な情報を集め終えた後、書物を閉ざした。未だ奥の本棚の影に俺が居る事へ気付いていないらしい二人は、今度は何やら別の戦術について談義を交わしているようだ。傍にある積み上げた書物の一番上へ、手にしていたものを置き、別の書物を代わりに取ったところで、書庫内に気配がもうひとつ増える。

「……うわ」
「家康様…!家康様も書物を借りに来られたのですか?」
「それ以外で書庫に来る理由なんか無いだろ」
「相変わらず三成くんに塩対応だねー家康くん。あ、書物返すなら私が預かるよ」
「そう、じゃあ頼んだよ」
「了解でーす」

どうやらやって来たのは家康らしい。俺は必要に応じて時折といった具合だが、家康と三成に関しては元々書庫に入り浸る事が多い。こうして鉢合わせするのも珍しい事ではないが、今日は随分とこの場に人が集まるものだ。家康が三成に対して素気ない対応を取るのはいつもの事だが、彼方殿もそれに関してはすっかり慣れているようだ。苦く笑っている様が目に浮かぶ。

「家康様、こちらの書物はお読みになりましたか?実に興味深い記述が多く載っていました。あとこちらには、南蛮の医術に関しても記述もあります」
「……ふーん、じゃあそれ貸して」
「…!はい、あと是非こちらの御本をお読みになった感想もお伺いしたいです。実に真新しい戦術ばかりで、自分がまだまだ未熟だという事を思い知らされました」

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