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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第3章 世の中は九部が十部



俺に対して自らの身を顧(かえり)みないと、この男も凪と同じでよく言うが、それは秀吉にも言える事だ。俺のかけた揶揄に秀吉が眉間を顰める様を見て、わざとおどけた素振りをした後、そのまま歩き出す。この刻限であれば三成は既に執務室に訪れている頃か。早々に話し合いを済ませ、午後から訪れる客人について部下に周辺を固めさせるとしよう。


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執務室内で三成との会合を終えた後、少々調べ物をする為、書庫へ足を向けた。凪と同じ五百年後の世からやって来たというあの娘の友人、彼方殿が安土城の書庫管理を任されてからというもの、書庫内には様々なものが増えていた。曰く、五百年後の世で言うところの【としょかん】とやらを目指すという彼方殿の発案で、書庫には書物を閲覧する為の机や椅子が数台設置され、書物を収める棚には種別にどのような分野の書物が収められているかが分かる、見出しのようなものが棚に付けられた。これが中々に使い勝手が良く、必要な情報がすぐに探し出せるというのは効率が良い。

(やはり近頃傘下に下った例の小国は、織田軍の規模を把握する為、わざと下った間諜代わりという事か)

三成と共に集めた情報を精査する事で浮かび上がった可能性は、恐らく読み間違いではない。現に三成が仕入れた兵糧の流れを読めば、小国が戦支度をしている事は必然だ。武器の流れについては、俺の放った間諜がまもなく報せを持って戻る。下手に動かれる前に、こちらからその可能性を潰しておけば、然程大事にはならないだろう。秋の実りが顕著なこの時期は、諸国がもっとも戦を厭う。越冬の備蓄を作る為、民達は皆必死になる。それはこの安土も例外ではない。

(戦が激化し、戦火で田畑を燃やす事になれば、苦しむのはその地に住まう民達だ)

この一件は出来る限り、挙兵という方法以外で収拾をつけたい。相手は然程度胸もない小心者な大名が治める小国だ。少数で城を包囲し、迅速に片をつける方向で策を練る方が得策だろう。小国周辺の地形が記された書物を幾つか傍に重ね、床に胡座をかいて書物をめくる。

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