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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第3章 世の中は九部が十部



今日は元々、凪と筆頭薬師である曲直瀬道三(まなせどうさん)殿で運営している調薬室や診療処を、安土に住まう民達へ解放する日取りだ。民達を受け入れるにあたり、城内の警戒を怠る事は出来ない。患者に紛れ、城内へ侵入しようとする、悪意ある者や不審な者をつまみ出す必要がある。その為、民達へ診療処などを解放する日は決まって武将とそれに連なる兵達が警護に当たり、目を光らせている訳だが。

(来客があってはそこまで手が回らないという訳か。まあ妥当な判断だな。そこまで警戒を強める相手では無いにせよ、面倒事は避けて然るべきだ)

政宗と凪のやり取りを耳に入れる傍ら、今日やって来る予定の相手を思い返し、俺は一人得心した。ここのところ季節風邪で忙しくしていた凪も、これで一息つけるだろう。午後は通常通り兵達やその家族、あるいは城に関わる者のみが利用するとあり、訪れる患者の数も比較的少なくなると予想出来る。凪と話を終えた後、政宗の隻眼が俺に向けられた。

「そういや光秀、お前確か午前は三成と会合だったか」
「光秀さん、今日は三成くんとお仕事なんですね」

近頃、織田の傘下に下った大名が妙な動きを見せているとの報せが俺の放った間諜から入っている。真偽の程は定かではないが、傘下に下ったばかりの大名の勢いを封じる事が出来ないともなれば、その後に続かんとする者もおのずと出て来る事だろう。

事前に謀反の可能性となる芽を摘む事も重要な役割のひとつという訳だ。政宗は仔細をある程度知っているだろうが、凪にそれを明かす予定はない。余計な心配をかけさせて、この娘を不安な顔にさせる訳にもいかないと言えば、正面に居る男は過保護だと呆れ顔をするんだろうが。

「ああ、他にも幾つかやるべき事はあるが、まずはその予定だ」
「お前等二人が揃うと、大抵碌な事にならねえからな……」
「え?そうなの…?」

当たり障りのない言葉を返すと、政宗が俺を胡乱(うろん)な眼差しで見据える。さて、一体何の事やら。

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