❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
それからしばらく、一室の中に膳が運び込まれれば、食欲をそそる香ばしく少しスパイシーな香りが辺りを満たす。家康の土産である香辛料を上手く使いこなし、実に美味しそうな夕餉を支度してくれた政宗が戻ったのを加え、四人でそれをいただく事になった。
「んー…!美味しい!」
「本当美味そうに食うよな、お前。お陰で作り甲斐がある。……おい光秀、飯に汁を混ぜて食うな」
「何をどう混ぜようと、腹に入れば皆同じだ」
「悪くないですけど、もう少しはっきりさせたいな。……かけるか」
「家康、身体に悪そうなもん追加でかけるんじゃねえ」
(こうやって皆でご飯食べてると、乱世に帰って来たって感じがするなあ)
こんな風に少し賑やかで、いつも通り自由に食事を摂っている何気ない光景が凪の日常のひとつだ。政宗に小言を言われながら混ぜる事を止めない光秀も、元々赤いものを更に真っ赤に染める家康も、何だかんだ言いながら皆でご飯を囲んで食べている事を楽しんでいる政宗も、そしてその光景を微笑ましく見ている凪自身も。現代は現代で楽しかったが、今はもうこちらの方がしっくりと来る程に、凪は乱世を居場所として認識している。
胸の奥がほっこりと暖かなものに満たされ、美味しい夕餉をいただいていたその時─────光秀が傍らに置いたままであった包みを思い出したかのように取り出した事で、凪は一気に現実へ引き戻される。
(しまった……!!まだあれが残ってた…!!)
「政宗、すっかり渡し忘れていたが、実はまだお前に土産があってな」
「……お前が渡し忘れるなんてそんな事あるか?」
「化け狐だ何だと言われているが、俺も人の身だ。物忘れのひとつやふたつくらいある」
((絶対嘘だ……))
さもうっかりといった風に取り出した包みを政宗が訝しむように見た。箸を置き、緩やかに肩を竦めてみせた男の物言いを耳にして、家康と凪の心がひとつになる。