❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
光秀が何やら企んでいるのではないかと即座に見抜いた辺り、さすがである。けれども、光秀とて簡単に尻尾を出すような男ではない。うっかり光秀と同じ括りにされた事へ不服を述べた家康が溜息をつく傍ら、凪は相変わらず照月をぷにぷにして内心ひやりとする。つい指先に少しばかり力が入りすぎてしまい、照月の丸い目が不思議そうに凪を見上げた。丸い耳をそっと撫で、見事な虎模様のもふもふを堪能しつつ、固唾を呑む。
「とりあえず、俺からはこれです。どうぞ」
「ああ、ありがとな」
「家康、もしかして皆にお土産買ってたの?さっき安土城で会った慶次にも渡してたよね」
「……別に、日銭が余ったから処理しただけ」
「何だかんだ言って優しいよね、家康って」
「あちらの世では家康のような態度を、つんでれと言うのだったか」
「み、光秀さん何処でそんな言葉を……!!?」
「彼方殿が家康の事をそう呼んでいたものでな」
傍らにあった包みを家康が政宗へ差し出す。笑みを浮かべてそれを受け取った政宗が土産の品を解くと、中から小さな瓶が三つ現れた。まさかの光秀がツンデレなどという単語を発言して来るとは思わず、凪がぎょっとしている中、政宗は貰った小瓶を不思議そうに手に取って見ている。
「これは何だ……?妙に鼻が刺激される匂いがするな」
「料理に使う香辛料らしいですよ。俺もあまり詳しくはないですけど」
「何やらすべての小瓶がやけに赤いが」
「ちょっと見せて」
未知の物体に首を傾げる政宗に、家康がしれっと答える。小瓶に入っているのは粉状のものであり、それ等がすべて真紅である様を目にして、光秀が些か双眸を瞬かせた。この中では一番それについて知識があるだろう凪が名乗りを上げると、政宗が包みの布ごと渡してくれる。畳へ置き一度軽く結んだ布を解いた瞬間、照月が尾の毛を逆立ててぎょっと目を丸くし、凪の腹部へぐりぐりと顔を埋めた。