❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
あの紙袋の中にはあちらの世で買った土産の品や個人的に買ったもの、祭りの夜に買った狐面と猫面、そして、射的で互いに取った二頭身の白狐、黒猫のぬいぐるみなどが収められていた。
五百年後の世で石畳の上に倒れていたように、同じく気を失っていたのだろう。先んじて目が覚めた光秀が、縁側の板張りに身を横たえている凪の姿を見て、揺り起こしたという訳である。
「じゃあ元居た場所に戻ったって事ですよね……他の人達はちゃんと無事に戻れたかな…」
「兼続殿達が居たのが春日山城だとすれば今すぐ確かめる術はないが、秀吉や家康、三成はすぐに確認出来そうだな」
「そうですね……一応佐助くんにそれとなく文出しておこうかな」
「そうするといい」
巻き込まれては危ないから、と少し離れたところで彼方と別れを告げ、武将達と凪、佐助は予定通り起こったワームホール現象によってタイムスリップし、再びこの乱世に戻って来た。状況から見るに、現代へ飛ぶ直前の場所へと戻されたらしい。遠い地に居る面々へは確認の文を改めて送るとして、凪は傍で丸くなったちまきを優しく撫で、現状を確認する。
「多分一週間くらい向こうに居たけど……こっちの時間の経過はどうなんだろう」
「恐らくそう刻は経っていない筈だ」
「え……?」
元々乱世から現代へ戻った際、時間の流れが異なる事は佐助から指摘されていたが、逆がどうなるかという保証はなかった。万が一、およそ七日間も安土から武将数名が一気に居なくなっていたとすれば、それこそ大事になってしまう。けれども、彼女の懸念をすぐに払拭したのは光秀である。彼は理知的な金色のそれを辺りへ巡らせ、改めて凪へ向き直った。
「ちまきがここに居る事も判断材料のひとつだが、何より茶器が片付けられていない」
「確かに……九兵衛さんや光忠さんだったら、絶対に片付けてますよね」
「特に騒ぎが起こっている様子もないとなれば、あちらで過ごした七日は、こちらの四半刻にも満たなかった事になるだろう」