❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
合流早々彼方に事の仔細を訪ねられた凪は、一連の騒ぎに関して簡単に説明をした。一般人と生死をかけた戦いを日夜繰り広げている武将とでは、そもそも様々なスキルに違いがあり過ぎる。感心した様子で零した彼方に凪が同意を示せば、生ぬるい眼差しでさらりと流された。
「それよりそろそろ花火始まるし、よく見える場所に移動しよ」
「でも、今から場所取りって難しくない?」
「大丈夫、ちょっと残業手当て出してうちの従業員に手伝って貰ったから」
「え゛」
花火大会を見る為、出店を回って楽しんでいた人々が一斉に川沿い付近へ集まっているそこで、今更場所取りなどというものは難しい。そう凪が指摘すると、彼方がしれっと言って片手を振ってみせる。店の従業員に先んじて場所を取らせていたという、ちゃっかり者の友人へ驚いていると、光秀がいっそ感心を覗かせて双眸を瞬かせていた。
「どうやら彼方殿は上に立つ者の資質が備わっているらしい。こうも自然に人を使うとは、中々のものだ」
「それって良い事なのか悪い事なのか分からないですね……」
さすがは有名グループのご令嬢といったところか。そんな訳で現代ツアー一行は彼方の従業員達が必死で勝ち取ってくれたベストポジションへ向かうべく、足を向けた。
従業員達が確保してくれていた場所は、川沿いの最前列であった。土手になっているそこには落下防止用に腰程までの高さの柵が張られていて、打ち上げ自体は反対岸にて行われる。帯状に連なっている人混みは今か今かと始まりを待ちわびており、凪が光秀の隣に立ちながら手前にある柵へ軽く両手を置いた。武将達や彼方、佐助はその柵沿いに一列で並んでいる。川の中腹近くの最前列、まさに絶好の花火見物スポットである場所を死守してくれた従業員達に感謝しつつ、遠くに明かりを望む事が出来る暗い夜空へ視線を投げた。
「そういえば、乱世にも花火ってあったんですか?」
「あるといえばある。ただ、こうして観賞する為のものではなく、狼煙などの代わりとして使われる事が多い」