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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



武将達も口々に彼方に向かって礼を口にすると、彼女は何とも言えない気恥ずかしそうな面持ちで眉根を寄せ、畏まったのは無しって言ったのに、と小さく照れ隠しにぼやいていた。

「ま、取り敢えず落ち着いたところで、色々話を聞く前に何か飲み物でも注文しておこっか。ていうかお腹空いてない?私は空いた。あれだったら適当に注文しとくけど」
「じゃあお願いしてもいい?…あ、出来ればおにぎりとかそういうのがいいんだけど…」
「おにぎり?いいけど。適当にその辺座って待ってて。じゃ注文してくる」

こちらの世は夜中の三時だが、元々凪達は昼過ぎの時点でワームホールに巻き込まれた。時間経過の感覚的にはちょうど夕餉付近といったところであり、適度に空腹を感じて来る時間でもある。正直時差ボケならぬワームホールボケが激しいが、空腹は普通にやって来るものだ。何かを注文するという彼方に対し、凪は可能な限り武将達に馴染みにあるものをお願いした。命のやり取りが日常茶飯事の彼等は、まだ完全にこちらの世に馴染んでいない。警戒して用意したものを食べないという可能性を考慮し、武将達でも知っている握り飯を頼んだのである。些か怪訝な面持ちを浮かべていた彼方は、それでも小さく頷くと注文をしにエレベーター付近にあるルームサービス用の電話へと向かって歩いて行った。

彼方がその場から離れた後、近場にあった真っ白なソファーへ腰掛ける。座り心地が抜群のそこへ腰を落ち着けた瞬間、光秀が些か驚いた様子で双眼を瞬かせた。四人は悠に腰掛ける事が出来るだろう広々したそこへ凪と二人で座り、光秀がふと口を開く。

「彼方殿が令嬢だというのは本当だったらしいな」
「そうですよ、世が世ならお姫様って感じです。私はこっちだと思いっきり庶民ですけどね」

バスの中で話していた言葉を疑っていた訳ではないが、実際目にしてむざむざと実感したという事だろう。くすくすと可笑しそうに笑い、凪が肯定する。ホテル業をメインとし、様々な事業展開をしている大手グループの一人娘であれば、乱世でいうところの姫と呼んで遜色ないだろう。

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