❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
「もしかして、佐助くん達を先に行かせたのも計算、とか?」
「そう大それた事ではないが、数日共に過ごした中で佐助殿を始めとし、幸村殿、兼続殿がどのような性格かはおおよそ把握していた。先んじて動く事はある程度想定内といったところだ」
(す、凄い……)
元々人を見る目がある人だとは分かっていたが、現代でもあらゆる意味で光秀の鋭い観察眼は惜しみなく発揮されているらしい。五百年後の世だろうと乱世であろうと、光秀が居れば不可能な事など何もないような気がして、頼りになる広い背中を凪が尊敬の眼差しで見つめた。
光秀の言う人の薄い層、というのはどうやら提灯の明かりが届かない、出店と出店の切れ目を指していたらしい。確かによくよく見ると、他よりも光源が弱くて暗くなっている所為か、祭りに訪れた客達が足を止めている様子はない。人波を縫い、彼が指し示した暗いそこへ辿り着く。電線の関係で一度提灯が途切れているその場所は、出店が三軒悠に並べそうな程の空間となっていた。
「さて、上手く誘い込まれてくれるか」
「ここからじゃ暗いし、よく見えませんね……」
「明かりを避け、暗がりを好み進むのも悪党の習性というものだ。こちらとしてもその方が色々と都合が良い」
「どうしてですか?」
暗がりの中で足を止め、明かりのついていない、幕が下ろされた出店の影へと二人で身を隠す。さらりと言ってのけた男へ疑問を露わにし、凪が不思議そうな面持ちで首を傾げた。光秀は暗闇の中に映える金色の眸を傍に居る彼女へ流し、口元に色気の滲む笑みを浮かべる。
「こちらの世で過ごす最後の夜に、荒事など無粋だろう?」
「光秀さん……」
容姿云々で目を惹くのはもはや仕方のない事とはいえ、極力それ以外でいやに目立つ事は避けたい。そう考えていたのは光秀もどうやら同じであったらしい。囁くようにして告げた男の言葉に、凪の鼓動がきゅうっと甘く締め付けられた。繋いでいた指先にほんのりと力を込め、絡ませる。