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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



どちらかといえば謙信への土産の品である梅干しを案じているらしい兼続へしっかりと凪が頷けば、男が藤の眸を光秀に流した。二人がやり取りを交わしている間にも、光秀は涼やかな切れ長の眸で先程と同じく注意深い様子で人混みを見つめていたらしく、兼続の視線を受けてすぐに顎で一人の男を指した。

「あの白い着物の男だ。佐助殿と幸村殿が張っている者と同じ方向へ不自然に引き返した。妙に辺りを警戒している。後ろ暗い者に見られがちの所作だな」
「何か光秀さん、探偵みたい。兼続さん、気を付けてくださいね」
「ああ」

光秀が指す男を見て合点がいった様子で兼続が頷く。こうも大勢の人々がごった返している場所で、よく一人一人の所作を見抜けるものだ。それが武将として培って来た観察眼であるのか、とにかく凪が感心を露わに呟く。兼続にも一声かけると、彼は短い相槌を打ち、そのまま男の元へ近付いていった。

「…くそっ!」

兼続が白いTシャツの男へ近付いて行くと、何かに勘付いたらしい男が小さく毒づき、突如として人をかき分けながら走り出す。退け!と荒々しい声を上げた男に合わせ、佐助達が張っていた方の男も、煽られた様子で急に慌ただしく動き始めた。付かず離れずの距離感を保っていた佐助達がそれを追って動き出したのを目にし、光秀が凪の片手をしっかりと繋ぐ。

「おいで、凪」
「あの、どうするんですか!?」

ごく自然に男へ促され、凪が驚いた様子で双眸を瞬かせた。ひとまず光秀に付き従う形で歩き出しつつ疑問を投げかけると、彼は口元へ三日月の如き笑みを浮かべ、金色の双眸を僅かに眇める。

「この人混みから抜ける為、盗っ人は必ず人の層が薄い場所へ向かう。そこへ先回りし、逃げ場を塞いでおけばいい。退路を断つのは兵法の基本だからな」

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