❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
通常のグラスではなく、グラス全体が薄っすらと淡い虹色の光沢を帯びた美しいもので、赤よりも白を注いだ方が見た目には特に美しい。ただグラスを飾っておくだけでもインテリアとしてよく映える一品である。土産談義に花を咲かせている最中、スマホの通知である電子音が小さく聞こえ、凪が巾着からそれを取り出した。
「あ、彼方から連絡ありました。待ち合わせ場所と時間、大丈夫みたいです。あとちょっとで連絡した時間になりますし、そろそろ移動します?」
端末へ視線を落とすと、彼方からの返信であった。待ち合わせ時間と場所について了承の返事が来ていた事を光秀に告げた後、佐助達春日山組と現在共に居る事を伝える。このままの流れであれば、凪達と共に彼等も移動するだろうと考えての事だ。
「ああ、そうだな」
「じゃあ俺達もこのまま一緒に向かって合流します」
「おー、移動か。最初からすげー人だったけど、更に増えたな。凪、お前埋もれて流されていくなよ」
「もう、子供じゃないんだから」
光秀が彼女の言葉に同意し、佐助達も共に向かう事を告げる。ぺろりとたこ焼きをひと舟平らげた幸村が、設置されているゴミ袋にしっかり空の舟皿と竹串を捨てた後、凪を揶揄するように声をかけた。心配よりもからかいが勝っていると雰囲気で感じ取り、むっと凪が眉間を顰める。そんな彼女の片手をするりと絡めるように繋いで、光秀が小さく笑った。
「童(わっぱ)でないお前には無用な気遣いだったか」
「……そうとも言ってません」
答えなど分かりきっているくせに、彼女の表情を軽く覗き込むようにして金色の双眸を軽く眇めれれば、凪が如何にも不服げな面持ちでぽつりと告げる。はぐれて流されていかぬよう、しっかりと指先を絡めて手を繋いだ二人と春日山組が、待ち合わせ場所である時計下に向かって足を進め始めた瞬間、賑やかな喧騒の中で一際高い声が響き渡った。