❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
「あれ、佐助くんに兼続さん、幸村も…!」
「この人混みの中で特定の人物とエンカウントするのは、中々出来る事じゃない。ただ、ごめん。お邪魔だったかな」
「ううん、全然!もうすぐ花火始まる時間だしって、さっき彼方に連絡したところだよ」
人混みの中に紛れて中央の通路を歩いていた春日山組三人の姿を見やり、凪が声を上げる。三人は彼女等二人の元へ近付いて道端に避けると、そこで足を止めた。佐助が逢瀬真っ最中である凪と光秀の二人を前にして、眼鏡のブリッジを軽く押し上げて告げる。無表情の中に、若干申し訳なさそうな色を見て取った彼女が慌てて首を左右に振った。
「佐助殿達は彼方殿や秀吉達と別行動を取っていたのか」
「ああ、関心のあるものが別だろうからと、あの娘が気を回した」
「確かに少人数ずつのグループの方が周りやすいですもんね。…兼続さん、それ何持ってるんですか?」
凪と光秀を二人きりにさせてくれた際は、残った安土組と春日山組は共に行動していた筈だ。光秀が声をかければ、兼続がおもむろに頷いて簡単に経緯を説明する。祭りの最中であっても生真面目な雰囲気を崩さない兼続を見て、彼らしいなあと小さく笑った凪がふと、男の片手にあるものへ視線を落とし、問いかけた。
「謙信様への土産の品だ」
「幻のしそ漬梅だってよ。こっちに来てまで更に梅干し買うか?普通」
「主君が好まれるものを献上するのもまた、家臣の務めだ」
「だから壺持ってたんですね」
兼続の手には、掌よりもふた回り程大きな壺が、口付近を麻紐で括られた状態でぶら下げられていた。片手に壺を引っさげて歩く男の姿は若干現代にはそぐわないと思われがちだが、生憎と格好が乱世のそれである為、絶妙に合っている。片手にたこ焼きの舟皿を持った幸村が呆れた様子で兼続を見るも、彼はいつも通り特に表情を崩す事もなく言ってのける。壺を手にぶら下げて持っている件が解決すると、佐助が会話へ割り入った。