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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



凪が狐のぬいぐるみを落とした後、残りの弾はすべて小さな菓子を狙って落とした。光秀が一発で景品を落とす中、凪は実質二発でひとつを落としていたので、十個景品を得た事になる。けれども、凪は光秀の許可を得てそれ等の菓子を、ギャラリーと化していた幼稚園児くらいの子供達へ分けてあげたのだった。彼女の手元に残ったのは、光秀が落としてくれた黒猫と、凪が自分で落とした白い狐のぬいぐるみのみである。ボールチェーンがついたそれ等を巾着に並べてつけている為、歩く度に白と黒のデフォルメされた生き物が寄り添うように揺れていた。

「あともう少ししたら花火が始まる時間ですね。まだ彼方達からは連絡無いみたいだけど…」
「こちらから一報入れておくといい。先程より人通りが増えたようだからな」
「花火が始まったらもっと増えると思いますよ」

スマホ端末を取り出して通知を確認してみても、まだ彼方達からの連絡はない。花火大会が始まる十九時まで、後三十分もない事を確認してから光秀へ窺うように顔を上げた。彼女の視線を受けた光秀は、周囲を一瞥した後で繋いだ指先にきゅっと力を込め、人混みに凪が呑まれてしまわぬよう、自らの傍へと身を引き寄せる。祭りの目玉とも言える花火大会目的で、人々はいっそう密度を増したようだった。川沿いに上がる盛大な花火は、京都の夏の風物詩としても有名で、更なる混雑が予想される。

「凪、道の端へ一度避けるとしよう」
「はい」

スマホを操作していると、足元などの注意が散漫になる。それを懸念した光秀が凪を促して人の波を庇いながら縫い、道の端へといざなった。

通行の邪魔にならない道端で立ち止まり、凪がスマホ端末を慣れた手付きで操作する。彼方達が現在何処に居るか見当がつかない為、目立つ目印のある場所で待ち合わせしようと打ち込み、ディスプレイから顔を上げた彼女が辺りを見回した。

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