❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
「あっ……もう!今度こそ私が払おうと思ったのに」
「そうむくれるな、膨らんだ頬を突付きたくなる」
「それは駄目です。……ありがとうございます、光秀さん。次のお店は絶対私が払いますからね」
「俺より早く勘定が出来たら考えてやるとしよう」
林檎飴の時などと同様、あまりにも自然な所作で支払いをスマートに済ませてしまった光秀へ、些か眉尻を下げた。現代の貨幣も、乱世へ戻れば無用の長物と言われればもはやそれまでだが、彼にばかり払わせているのはやはり気が引ける。次こそ絶対に自分が支払うと意気込む凪へ肩を軽く揺らし、余裕な素振りで言い切った光秀が、台の上に置かれたものへ視線を向けた。店番の男によって渡されたプラスチックの容器の中に、十発分のコルク弾が入っている。実際の弾薬等とは似ても似つかないそれへ改めて人知れず安堵を抱き、些か興味を覗かせて男がコルクを指先でつまみ上げた。
「これが弾の代わりか」
「はい、ここにこうやって入れて、一発ずつ装弾するんですよ」
「ほう…?」
若干弾力のある独特の感触は光秀にとって何処となく不可思議だ。そんな光秀の反応を見て微笑ましそうに笑い、手本として凪が試しに銃へ装弾して見せる。ぐっと装填用のレバーを手前側へ引いて準備を終えた凪の所作を見やり、男が相槌を打った。そうして、見様見真似で同じようにコルク弾を銃へ装弾し終える。
手慣れた感や器用さといい、光秀は大抵の事に対してとても要領がいい。レバーをぐっと引いたその所作ひとつですら様になるのだから、困ったものだ。光秀が普段手にしている種子島よりも、一回り程小さめなそれを手にしている姿へつい視線を奪われてしまった凪は、ぱちりと目がぶつかり合った瞬間、慌てて顔を逸らす。
「や、やってみましょう…!景品は後ろでも前でも、とにかく棚から落とせばいいので」
「お前はどれを狙うんだ」