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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



(射的だ…!)

数人が横一列に並び、射的用のライフルを構えてコルク弾を的へ向けて撃っている様を見て、凪が心の中で声を零す。彼女の視線を追った先、そこに銃を構えている者達の姿を見つけた光秀が、凪の身体を咄嗟に自身の背へ庇った。突然の出来事に驚いた凪が顔を上げると、光秀は些か怪訝な色を眸に過ぎらせ、射的屋を見つめている。

「光秀さん、大丈夫ですよ。あれは本物の銃じゃないので」

繋いでいる方の手とは反対の手で光秀の着物の袖を軽く引くと、相手を安心させるように声をかけた。彼女の言葉を聞き、一瞬張り詰めた全身の緊張感を消し去ると、光秀が仄かな安堵を滲ませる。

「……そうか」
「玩具の銃で、弾の代わりに木の皮で出来たコルクっていうものを使ってるんです。棚に並んでる商品を撃ち落としたら、それが景品として貰えるんですよ。せっかくだからやってみましょう…!光秀さんの銃の腕前の見せ所ですねっ」
「お前が言うなら、そうするとしよう」

平和な世だと耳にしている為、乱世のような戦火に巻き込まれるといった意味での危険が無いとは重々承知しているが、やはり身に染み付いた癖というものは容易に消えるものでは無い。種子島というよりは、マスケット銃に近い形状のそれを構えて、棚に並ぶ景品へ向けて撃っている様を改めて確認した光秀が短く相槌を打った。確かに破裂音のようなものはするが、火薬独特の匂いはしない。銃と言えば光秀、という事で凪が意気揚々と誘いをかけて来た。楽しそうな彼女の表情を見て、口元を綻ばせた男が鷹揚に頷くと、二人で射的屋へと足を向ける。

「すみません、二人分お願いします」
「あいよ、五発五百円で一度に二回分まで出来るよ」
「じゃあ二回分で!」

ちょうど前で遊んでいた若いカップルが立ち去り、他に並んでいる者が居ない事を確認してから凪が店番の男へ声をかけた。合計十発分のコルク弾が貰える事を聞き、二回分まとめての料金で支払おうとする凪の隣で、光秀が紙幣を二枚男に向かって渡す。

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