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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



凪が狐面を手にした状態で首を傾げた。斜めにかかった仔猫の面が、橙色の灯りに照らされて艶を帯びたように光る。愛らしい黒猫をつけた、愛しい連れ合いの言葉へ、光秀がわざと茶化すような物言いをした。狐と仔猫では到底猫に勝ち目は無い。それと分かっていながら、彼女はしかし嬉しそうに表情を綻ばせる。惑いの無い言葉は真っ直ぐに届けられ、男の心を揺らした。瞼を伏せて吐息混じりの言葉を漏らした後、光秀が凪の求めに応じて軽く上体を屈める。

「出来ました!」
「ああ、ありがとう」

光秀の頭にも同じく斜めに白い狐の面をつけ、満足げに凪が笑った。銀色の髪に白い狐面はよく映える。こうして面を付けて、白い着流しと袴姿で居ると、本当にここが現代の日ノ本なのだと忘れてしまいそうになる。周囲の景色は一瞬にして溶けて、光秀の姿だけが輪郭を露わにしているような感覚に、凪がつい目を奪われた。

「やっぱり、よく似合いますね」
「それは光栄だ。今後も意地悪な狐として、仔猫をいじめる事にいっそう励むとしよう」
「意地悪だけじゃなくて、優しい要素も忘れずお願いします…!」

彼女が零した感想を耳にし、光秀が小さく肩を竦める。手を繋ぎ直し、同じ歩調で歩き出した凪の横顔を見ながら、敢えて意地悪な言葉を投げかけると、口角を持ち上げた。橙色の灯りを帯びてきらきらと光る銀糸と、白い狐面が、含みのある金色の眸を更に惹き立てる。どんなに意地悪されても、その本心がすべて優しさで満ちていると知っているから、今もこうして凪は光秀の傍に居る。そんな感情が透けて見える、戯れのように笑って告げた凪の笑顔を目にして、光秀はそっと眸を和らげたのだった。



お面屋から遠ざかって歩いた先では、飲食系の出店では無く遊戯系の出店が暫く続いていた。輪投げやくじ、ダーツなどの定番な遊戯の中に、凪が一際目を惹く一軒の出店を発見して軽く目を瞠る。比較的大人も多く興じているそこの出店付近へ近付くと、パン!と鈍い破裂音に近い音が響いた。

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