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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



丸いふわふわした菓子の感触など想像もつかないが、それを手にした凪の姿は愛らしい筈だ。

「せっかくだし買ってみる?何でも体験しといて損はないよ!って事で、綿あめ三つくださーい」
「あ、彼方待って。お金……」
「お前の分は俺が払おう」

乱世では絶対に御目にかかれない品という事で、彼方が意気揚々と綿あめ屋の店番に声をかけた。恐らく一人ひとつだと食べるに大変だと思ったのだろう。ひとまず三つ注文した彼方へ、慌てて凪が財布を取り出そうとすると、隣に居た光秀が五百円硬貨を店番の男へ渡した。そのあまりにも自然な勘定は、乱世での彼の姿を彷彿とさせる。格好が乱世で見慣れたものだからだろうか。好きなのを選んでいいと言われた光秀が、半透明な袋に入っていた水色の綿あめを手に取って凪へ渡した。

「あ、ありがとうございます、光秀さん。こっちのお金の扱い、すっかり慣れたみたいですね」
「貨幣の種類の多さには驚いたが、慣れると存外便利なものだな」
「光秀さんの適応能力の高さ、今更だけどびっくりです」

綿あめの袋を手渡され、それを受け取った凪が笑顔で礼を述べる。光秀に限らず、武将達は皆それぞれ呑み込みが速い。硬貨や紙幣の価値や基準を教えた佐助が感心していた理由を改めて実感し、凪が買って貰った綿あめの袋を開けた。

「わあ、何か懐かしいなあ。小さい事はよく買って貰って食べてました。一人で全部食べきれないから、いつも弟とはんぶんこしてて。はい、光秀さんどうぞ」
「ああ、ありがとう」

割り箸の先にふんわりと丸い水色の綿あめがついているものを取り出し、彼女が手に持った。片手でそれをちぎり、光秀に差し出す。掌へ乗る程の柔らかな固まりを受け取り、更にちぎって口内へ放り込んだ。途端、雪のようにふわりと溶けて甘さだけを残し、跡形も無く消えていった様へ金色の双眸を不思議そうに瞬かせる。

「ふわって無くなりました?」
「海で食べた氷菓子よりも更に呆気なかったな。噛む必要が無いのは悪くないが」
「氷は水になるけど、綿あめは本当に溶けちゃって甘さだけが残るんですよね」

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