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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



恒例となりつつある二人のやり取りを止めに入った秀吉が宥めるように声をかけ、改めて両端にずらりと並ぶ出店を興味深そうに見る。

「だが、確かにこれだけの規模の祭りが催せるとは大したもんだ。見慣れない出店も沢山あるが……」
「気になるものがあれば遠慮なく言ってください。休憩所で落ち着いて食べる事も出来ますが、祭りは食べ歩きが基本ですよ」
「食べ歩きだと……?この人混みの中でよくそんな芸当が出来るな」
「現代人は朝の通勤ラッシュに始まり、帰宅ラッシュに揉まれて生きているので、人混みの対処には案外慣れています」
「らっしゅ……?まあよく分かんねーけど、さっきから美味そうな匂いはしてるよな」

祭りで買って食べるだろうから、と夕餉は済ませていない。佐助が武将達へ声を掛けると、兼続が怪訝な顔で周囲を見回した。確かによく見れば、行き交う人々は手に何かを持ち、それを食べながら歩いている。実に真面目な顔で解説する佐助の言葉へ首を捻り、幸村が周囲の出店から漂う香りに視線を向けた。

「あ、綿あめだ」

ふと凪が声を上げる。視線を向けた先には、膨らんだ袋が幾つもぶら下げられている屋台があり、そこから甘い香りが漂っている。丸い機械の中にザラメを入れ、割り箸を手にしてくるくると円を描くように回して行くと、次第に雲のようにふんわりした菓子が出来上がって行く様を見て武将達は驚きに目を瞠った。

「凪、あれは何だ」
「お砂糖を溶かして作ったものですよ。凄くふわふわして、甘いです」
「ほう……如何にも童(わっぱ)が好みそうな菓子だな」
「もしかしなくても、子供っぽいって言ってます?」
「いや?あれを頬張っている様は、さぞ仔栗鼠のようで愛らしいだろうと思ってな」

光秀の問いに凪が応えると、彼の金色の双眸は再び物珍しそうに綿あめの機械へ向けられる。始めは何もついていない割り箸へ、次第にふんわりした綿が形作られて行く様が相当奇妙に映るのだろう。彼女の言葉へ、ふと口元を綻ばせた光秀が視線を流せば、凪がじとりとした眼差しを向けて来た。

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