❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
周りの景色は現代だというのに、格好は乱世のものであるその様が、凪の中に不思議な感覚を去来させた。
(不思議だな……でもこうやって見ると、乱世から現代へ飛んで来たって凄く実感する。浴衣も現代の服も格好良かったけど、今の姿が一番自然体で見慣れてるから)
手を繋いで隣を歩く端正な顔立ちの男を見上げる。銀色の髪が提灯の灯りに照らされて輝く様はとても美しい。鮮やかな色へ染め抜かれた光秀を、ただじっと見つめているだけで鼓動が速まった。
「どうした」
「……何でもないです」
「俺へ堂々と隠し事とは、悪い子だ」
凪の視線を感じ取り、光秀が金色の眸を流して口角を持ち上げる。答えなど聞かずとも分かっているというのに、わざと問いかけて来る光秀へ反抗の意も込めて、凪が笑った。短い吐息を漏らして笑い、それ以上深くは追及して来なかった光秀が、促すように繋いだ手を軽く引く。
「ほらほらそこのバカップルー!置いてくよー!」
「もう!バカップルって言わないでっ」
少し先を進んでいた彼方を含む武将一行が立ち止まり、こちらを見ていた。片手を振って声をかけて来た親友へむっと眉根を寄せつつ、文句を言いながらも光秀と凪の二人は祭り通りへ足を踏み入れる。
「賑やかな祭りですね。是非安土の祭りも、このように活気あるものにしたいです」
「……こんな蒸し暑い夜に元気な連中の気が知れないけど、まあ雰囲気としては悪くないんじゃない」
「家康様と同じご意見で嬉しいです」
「俺は全然嬉しくない」
「こら、せっかくの祭りで喧嘩するのは止めなさい」
陽が沈んだにも関わらず、辺り一帯が明るい様をぐるりと見回して三成が面持ちを綻ばせた。乱世の祭りも中々に賑やかではあるが、ここまでの華やかさは無い。はあ、と辟易を孕んだ深い溜息と共に蒸し暑さへ物申した家康が、けれども明るい人々の表情を見て同意を示す。同じ意見であった事へ嬉しそうに笑う三成へ、実に素っ気ない物言いをする家康が視線をふいと逸らした。