❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
あっという間に数日間が過ぎ去り、とうとう五百年後に滞在する最終日。明日にはワームホールが開いて乱世へ戻る為、土産屋ツアーをしたその夕刻、一行はホテルの近所で開催される花火大会へ赴く事になった。
夕刻から賑やかな喧騒に満ちた祭り通り。車両通行止めとなった道路の両端には様々な出店が立ち並び、頭上には煌々と輝く提灯が幾つも連なっている。目映い光源のお陰で薄い闇に包まれ始めた刻限であっても明るく、視界は割と明瞭だ。多くの人々が夏の装いや浴衣などで歩く中、一際目立ち、尚且つ溶け込んでいる一行がいた。すれ違った者達は必ず振り返り、それぞれの容姿端麗な姿に女性は見惚れ、目を奪われる。湿気で蒸した真夏の夜、火照るような熱気に満ちても尚、人々は賑やかで風流な喧騒に誘われ、祭りの中へと足を向けてしまう。
「凄い人混みですねっ、はぐれないようにしないと」
「ならば、しっかり捕まえておくとしよう」
祭りの入り口付近に立った凪が、出店通りを行き交う沢山の人々を見て感心したように声を上げる。京都の花火大会といえば全国から観光客が多く訪れる夏の目玉イベントだ。一度はぐれたらそうそう合流出来そうにない雰囲気を前にして目を瞬かせていると、隣に並ぶ光秀が凪の手を取って指を絡めるようにして繋ぐ。恋人繋ぎの状態できゅっと力を込めると、彼女が嬉しそうに口元を綻ばせた。
「それにしても、意外と違和感無いですね。光秀さんも皆も」
「格好の事か。確かに周りも浴衣姿の者達が多いからな」
「彼方が最初、いつもの格好で出掛けたらって言った時はちょっと心配だったけど、安心しました」
せっかく祭りなんだし、どうせなら乱世の格好で出掛けたら?と出立前に提案したのは彼方だ。今日が実質最後の現代ツアー日である。最終日くらい、元の格好で気兼ねなく歩けばいいじゃない、と告げた彼方の提案に乗っかる形で、武将達と佐助は乱世からこちらへやって来た時の格好、普段着で祭りへ訪れている。ちなみに凪と彼方はそれぞれ浴衣姿だ。目映いオレンジ色の提灯の灯りに照らされ、光秀の白着物と袴がいっそう際立つ。