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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



彼方は自他共に認める歴史オタクだ。最近は特に戦国時代が熱い。白い男の着物に描かれている家紋は明らかに桔梗のそれであり、桔梗を家紋に掲げている家をぱっと脳裏で思い浮かべた際、一番最初に出てきた名を口に出すと、何故か本人ではなく凪が慌てていた。焦燥して彼方の方を振り向き、ちらりと涼しげな顔で隣に座る白い男を振り返る。先程バスに乗る際といい、今といい、どうにも凪の様子が普段と異なる事を見て取り、彼方は訝しみに眉根を寄せる。

「【ふぁん】がどういう意味かは分からないが、確かにそう名乗ってはいるな」
「………マジ?明智光秀って自分で名乗ってるの、ヤバくない?」
「ちょっと光秀さん、絶対面白がってますよね…!?」
「まさか」

彼方の解釈としては、桔梗の家紋をまとって自ら明智光秀だと名乗っているヤバいイケメン────つまり自称明智光秀だ。きょとんとした様子で双眸を瞬かせ、ぽつりと零した言葉へくつりと小さな笑いを零した自称明智光秀に凪が振り返り、怒った風な表情で言い募る。凪にまで光秀って呼ばせてる、ヤバい。そんな思考を彼方が繰り広げていると知ってか知らずか、男はむっとしている凪の頭を宥めるように撫でていた。

「えーと…じゃあ明智光秀さん、お兄さんは凪のなに?」
「恋仲だ」
「………凪、騙されてるんじゃない?大丈夫?」
「だ、大丈夫」

関係性を問いただしたところで、さらりと零された言葉に思わず無言になると、隣に座る凪を半眼で見やる。田舎育ちだからか、あるいは元来の気質なのか、少々騙されやすい気のある友人を案じた彼方が問いかけた。苦笑と共に零された言葉は些か頼りないが、男の凪へ向けた所作はどれも丁寧で優しい。これまで凪と付き合って来た元カレを見てきた彼方でも御目にかかった事のないタイプである。

「騙されてないならいいけど…」
「話し中にごめん。ちょっと質問したいんだけど、いいかな」
「ん?なに、佐助くん」

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