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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



行って来る、とそれだけ告げて口元へ微かな笑みを刻み、光秀が障害物から身を躍らせた。はらはらした心地でその背を見つめ、凪も援護するべく銃を持つ手にぎゅっと力を込める。そうして周囲に気を配りながら物陰から別の場所へと動き出した。

「光秀の野郎、堂々と出て来やがって。確実に揺動だろ、あいつ…」
「まあそうでしょうね。撃ってきた方向を把握して、俺達をあぶり出すつもりですよ、確実に」

必然的に右と左に分かれてしまった各組だが、既に戦場は左側方面へと切り替わっている。ひらりと身を覗かせた光秀が悠々としている様を、丸太の陰から見ていた秀吉が小さく唸った。確実に煽っているとしか言いようのないその姿に、日頃積もり積もった苛立ちが湧き上がるも、実に冷静な家康の言葉が被せられる。

「とはいえ、このままでは埒が明きません。ここは俺が囮になります」
「大丈夫なのかよ、佐助」
「心配要らない、これでも毎日謙信様に斬られ続けている身だ」
「自慢する事なの、それ」

このままでは永遠にゲームが終わらないと判断し、佐助が眼鏡のブリッジを押し上げる。意を決した名乗りに、幸村が案じるような声をかけた。いつも通りの真顔で言い切る佐助へ、家康が半眼になるとそのまま銃を抱え直し、溜息を漏らす。

「俺も出ます、このままあの人にしてやられるのは御免なので」
「では俺も出よう」

家康に続いて更に兼続も名乗りを挙げた。そうして三人がそれぞれ視線を合わせると、身を潜めていたサーフボードの陰から動き出す。囮部隊が立ち去ったのを見て、残った秀吉と幸村が視線を合わせた。

「じゃあ俺達は、囮につられた他の奴を各個撃破するか」
「あ、ああ…そうだな」

佐助達が光秀の前へ出る間、それを狙う三成達を別角度から狙う作戦である。何処となく歯切れの悪い相槌を打つ秀吉へ首を捻った幸村であったが、そのまま丸太の傍を離れた。残された秀吉はといえば、何とも言い難い複雑そうな面持ちで手にした銃へ視線を落とす。

「…遊戯だと分かっていても、凪や彼方、三成を撃つのは気が引けるな。光秀なら遠慮するまでもないんだが」

何処までも優しい兄貴分である秀吉の小さな呟きは誰にも拾われる事はない。はあ、といまいち気乗りしない溜息を漏らすと、彼もまたその場から動き出したのだった。

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