❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
自分が敵でも恐らく光秀を倒しに行く事だろう。しみじみ述べた友人に、彼方が問うと凪が実に神妙に肯定する。
「俺を狙うからには正面から突っ込んで来るような真似はしないだろう。となれば残るは四方からの挟撃、誰か一人が囮役をやる可能性も考えられるな」
「ええ、光秀様をお一人で止められると考えている方はいらっしゃらないかと。そうなるとこちらも囮を立てて誘導するのが定石かと思います。食らい付いたところを叩くには…」
「先に餌をまいた方が有利という訳だ」
織田軍が誇る参謀と頭脳が互いに言葉を交わし合い、意見を並べた。実に息の合った軍議を眺め、彼方が凪の傍へ寄りつつ、ぼそりと零す。
「明智さんや三成くんだけに限った話じゃないけど、意外と遊びにも全力な戦国武将、好感度めちゃ上がるわ」
「皆それぞれ負けず嫌いだからね……」
「凪」
「はい?」
彼方の言い分に苦笑した凪を、不意に光秀が呼んだ。不思議そうに目を瞬かせると、手招かれるままに彼の元へ近付く。そうして長身の男が軽く身を屈めて、凪へそっと耳打ちした。
「え、そんな事でいいんですか?」
「ああ、それで十分効果がある」
鼓膜へ注ぎ込まれた小さなアドバイスに、彼女が驚きを露わにする。不安げな凪の頭をさらりと撫で、光秀が悠然と笑んだ。今まで光秀が口にした事で悪いようになった事など一度もない。些か不安の色は残っているものの、凪がしっかりと頷く。むしろ自分が出来る事ならば、それをやって少しでも貢献したい所存だ。三成と彼方も、光秀が凪へ何を告げたのか予想出来ず、不思議そうな表情を浮かべる。けれども元々この男は必要以上に多くを語る質ではない。後々判明する事なのだろうと見当をつけ、ひとまず残りの一般参加者九人を打ち取るべく、行動を開始した。
【残り十七人ー!】
アナウンスが響き渡る中、ひとまず四人固まる形で周囲を警戒しつつ後方から前へ攻めて行く。彼方と共に戦場の右半分を巡った三成の頭の中には、大まかな地図が展開されていて、次に身を潜める場所を的確に指示していった。