❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
褒め言葉なのか何なのか、苦笑めいた笑みで零したそれに、三成が不思議そうな面持ちを浮かべる。礼を忘れないあたりが律儀で憎めない。
「では参りましょう、いざ」
三成の合図と共に二人が散った。カップルが潜んでいるのは、三成達が居た木箱から三つ程障害物を隔てた、パラソルの裏である。大きめなパラソルではあるが、どう頑張っても屈まなければならない場所の為、逃げるには一歩出遅れがちだ。そこを挟み撃ちで捉える。足音を出来るだけ立てないよう気を付けつつ、パラソルの手前にある板の裏へ彼方が隠れると、三成は反対側にある砂山の裏へ隠れた。互いに視線を交わし、じりじりと近付いたところで合図を交わして、一気に距離を詰めた。
「三成くん…!」
「承知致しました」
ざっと砂を蹴ってパラソルの裏側へ彼方が回り込んだと同時、三成も同じく反対側を位置取る。がっと水鉄砲を構えた拍子、女が悲鳴を上げた。
「きゃあ!」
「ごめんね、お姉さん!」
トリガーを躊躇いなく引いた彼方の水が女の二の腕にヒットしたと同時、三成も男に向かって銃口を向けるも、トリガーを引いたそれは何故か横へ逸れて発射される。
「この距離でまさかのミス!?」
「貰った!」
「あ、危ない三成くん…!」
男が立ち上がって三成相手へ銃口を向けようとした瞬間、彼方が声を上げて相手の背へ向けて水を放った。見事それが命中し、男女のカップルは悔しそうに退場して行く。
【残り二十一人ー!】
アナウンスが響き渡る中、他からの追撃を逃れるべく、二人は一度傍にあった木板の裏へ撤退した。緊張感からどきどきと鼓動が跳ねる中、深々と息を零して彼方が胸を撫で下ろす。はあ、と再びひとつ吐息を零した後、三成へ振り返った。
「やったね!二人討ち取ったり」
「すみません、彼方様……どうやらまだ銃の扱いに慣れていないようで」
「そういう事もあるある。でもやってく内に慣れるんじゃない?挟み撃ちは結果的に上手くいったんだし、気にしないで」
「ありがとうございます、彼方様」