❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
「ひょっとしなくても天才かな?」
「天才などとは恐れ多い事です。私など、まだまだ未熟ですから」
「おまけに謙虚でやっぱり天使かな」
同じく声を潜めながら三成が応えると、彼方が思わず真顔になる。あくまでも謙虚で控えめな返しをする様は、やはり天使と形容するに相応しい。目映い生き物を目にしているような感覚に陥り、彼方が何かを口にしようとした瞬間、それまで穏やかであった三成の表情が真摯なものへと変わる。
「彼方様、こちらへ」
「う、うん…」
紫色の眸に鋭さを帯びた様を目の当たりにして、彼方が思わず言われた通り三成の陰へ隠れると、不思議そうに目を瞬かせた。彼女には生憎と何も感じないが、三成のような武将ともなると、素人の気配などだだ漏れというやつなのだろう。片手にアサルトライフルを持ち、三つ程積み重なった木箱の陰で息を殺している内、カップルと思わしき二人の男女の姿がちらりと垣間見えた。
「とうとう敵とエンカウントしたね、どうする三成くん」
「どうやらあの方達以外、周囲に敵は居ないようです。こちらから打って出ましょう」
「待ってました!周りに敵無しって事は二対二だし、挟み込んじゃう?」
「挟撃ですか、悪くない手だと思います。では私は男性の方を、彼方様は女性の方をお願い出来ますか?」
「了解、ドジって討ち死にしたら骨は拾ってね」
これぞサバゲーといった調子で浮足立つ彼方へ柔らかく微笑み、三成が周囲を確認する。どうやら周りには他に誰も居ないらしいと伝えれば、実に好戦的な案が彼女から伝えられ、三成が微かに眸を瞬かせた。けれどもすぐに同意を示し、それぞれの担当を伝えると彼方が笑顔で頷いてみせる。
「ではそうならないよう、私が彼方様をお守り致しますね」
「………三成くん、天然なのに色々才能あるね」
「…?お褒めいただき恐縮です」
冗談めかして言った台詞へ、天使の笑顔が向けられると、彼方が今度こそぱちぱちと幾度も眸を瞬かせた。こんな物腰の柔らかさでそんな事を言われようものならば、勘違いする女性が数多出て来てもおかしくはない。