❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
「私も一人くらい当てたかったなあ」
「弓とは比べ物にならない程の命中率には少々目を瞠るものがあったが、結果的に良い威嚇射撃になった。お前が箱に当てたお陰で、男達の自制心が崩れたようなものだからな」
「………それ、褒めてます?」
「当然だろう」
残念そうに彼女が零すと、光秀が瞼を伏せて笑う。凪の放った一発で、敵はやはり的を狙えない下手な奴だと判断し、侮りと苛立ちでタンク内の水を使い切ったのだ。結果的に良しと言える。元々じわじわと追い詰めてから仕留めるつもりであった光秀だが、内輪揉めを起こした様を目にして予定を変更したという訳だ。ともあれ、フラグナンパ男達は見事に撃退した。残るは二十七人で、三成達との合流にはもう少しといったところである。
【残り二十三人ー!】
「あ、あと三人で合流ですね」
「ああ、こちらももう少し数を減らすとしよう」
ちょうど良いタイミングでアナウンスが流れ、合流の目安とした人数が近付くと、凪が光秀を見上げた。鷹揚に相槌を打ち、凪の手をそっと握った男は、激戦区となっている中央へ向かい、おもむろに歩き出したのだった。
──────一方その頃、三成と彼方ペア。
(運が良いのか悪いのか分かんないけど、敵に遭遇しない…!)
凪達と別行動を取ってからというもの、三成と彼方の二人は一切敵に遭遇していなかった。ぱちぱちと目を瞬かせた彼方が、三成の背を見る。その目は真剣そのものであり、彼はつぶさに戦場を見回した後、続いて木箱の陰へと身を潜める。割と先程からあちこち動き回っているというのに、ここまで敵に遭遇しないという事は、もしや三成の采配なのだろうか。いよいよそんな風に思えて来た彼方は、彼の後ろに続きながら潜めた声で話しかける。
「もしかしなくても三成くん、敵に遭遇しない場所選んで移動してる?」
「いえ、そういう訳ではありませんが、地形や障害物の角度を計算して、敵が攻撃し難い場所は選んでいるつもりです。秀吉様達と遭遇する前に、体力を消耗する訳にはいきませんから」