❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
力任せに無駄撃ちしている味方へ声を上げると同時、かち、と残量の終わりを告げるかの如く無機質な音が響き、水の勢いが失われていった。
「おい、俺に貸せ」
「ふざけんな、一人で勝手に丸腰になってろ」
「お前だって調子乗って女の胸撃ちまくってただろ」
空になった銃を砂浜へ捨て、男が別の男の銃へ手を伸ばす。それを拒絶するかの如く文句を言い、下らない小競り合いを勃発させていると、不意に彼らの背後から実に涼し気な声がかけられる。
「お前達、内輪揉めは終わったか?」
「!?」
「なっ…!?いつの間に…!?」
フラグナンパ男達の背後に立っていたのは、片手に銃を手にした光秀であり、その銃口はしっかりと彼らの顔面へ照準を合わせていた。振り返った男達が銃を構えるよりも速く、見事な精度で三発、顔面を撃ち抜く。かなりの至近距離で撃たれた男達が水圧に耐えきれず後方で尻餅を着いた様を見て、銃を下ろした光秀が口角を持ち上げた。
「味方の内に不和を招く。これも戦の基礎だ、その気があるならば覚えておくといい」
【残り二十七人ー!】
アナウンスが響き渡り、光秀がそのままサーフボードの裏側へと向かって行く。隙間から凪の姿が見え、嬉しそうに笑っている様に、男達が悔しそうな表情を浮かべると、砂を蹴ってその場を後にした。
「やりましたね!光秀さん…!」
「呆気ない幕切れだったがな」
「それは光秀さん相手だと、皆手も足も出ないですし…」
ボード裏で合流した光秀相手に凪が笑顔で近付く。周囲に敵が居ない事を予め確認した後、彼女をこの場に残して、光秀が一人別行動を取ったのだ。気配を気取られず移動するなど、日頃乱世で暗中飛躍している光秀にとっては朝飯前というやつである。一定の方向から煽るようにすれすれを狙っていたのは当然この男であり、凪が撃ったのは木箱の側面に当たったもののみだ。完全に仕留めるつもりで居たのだが、見事に外れた。