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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



ちょうど先程目にしていたフラグナンパ男達が、光秀と凪が身を潜めている場所のすぐ近くの木箱の裏へ逃げ込もうとしているところであった。

「残ってるの、野郎ばっか?」
「いや、多分まだ残ってるだろ。つーか最初にナンパした女二人も参加してたぜ」
「じゃあ男ちゃっちゃとやって、じっくり女の方、いじめちゃいますか」

如何にもチャラそうな男達の、下品な笑い声が微かに届く。こちらの方面に敵が居ないとすっかり油断しているのか、あまり声を潜めていない辺り、自信があるのか、ただの馬鹿なのか。いずれにせよそれを耳にして眉根をむっと顰めたのは凪の方であった。男達が言っている、最初にナンパした女二人、が自分と彼方の事だと気付いているのだろう。くい、と片手で光秀のパーカーを掴んで軽く引っ張った。口元に手を添え、控えた声量でこそりと隣に居る乱世のスナイパーへ耳打ちする。凪の声を捉える為、軽く身を傾けた男の鼓膜を、愛らしい音が揺らした。

「光秀さん、やっちゃってください。万が一水が足りなくなったら、私の銃あげます」
「おやおや、随分とご立腹だな」

くすりと音もなく笑い、光秀の唇に三日月が刻まれる。どうやらフラグナンパ男達の発言にご立腹らしい彼女からのお願いに、光秀が瞼を伏せた。もっとも、光秀としても先程偶然目にした彼らのやり口には、正直呆れを通り越していた事もあり、特に意を唱える必要もない。そもそも凪を苛めていいのは自分だけである。他の男にどうこうされるつもりもない。自己防衛の為、凪の銃を借りる事態になるのは避けたいが、そこまで言われてやらないなどという選択肢は光秀の中には無かった。凪が居直ったのを見て、今度は光秀が軽く身を屈める。彼女の耳朶へ直接音を注ぎ込むようにして、吐息で耳朶を掠めさせ、囁いた。

「お前の望むままに」



フラグナンパ男達が、次なるターゲットの元へ動き出そうとした瞬間、彼らが身を潜めている木箱の正面から、突如として水が飛んで来た。がっ!と割と鋭い音を立てて白い砂浜が弾丸のような水で抉られ、跡が残る。

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