❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
【残り三十人ー!】
「へえ、やるじゃねーか。豊臣秀吉」
「あいつじゃあるまいし、飛び道具は滅多に使わないんだけどな」
砂山の影から秀吉が身を潜める丸太の影へやって来た幸村が、身を屈めて敵ながら見事な激射に称賛を送った。苦笑めいた表情を浮かべつつも、素直に相手の言葉を受け取った秀吉が視線を丸太の向こうへ投げると、自分達や光秀達を含めて残り三十人となった戦場を見回す。恐らく状況としては、光秀の思惑通りに場が混乱し、隠れて動こうとしなかった者達も少なからず身動きを取っているようだ。
「つーかやっぱりこそこそ隠れるのは性に合わねー」
「気持ちは分かるが、これは普通の戦とは違うからな。下手に突っ込むと光秀の奴に狙われるかもしれないぞ」
「ならば挟撃する他ない。それには逆手を取られて背後を突かれないよう、俺達も周りを排除する他なさそうだ」
今にも単騎で突っ込んで行きそうな幸村を秀吉が宥めていると、ボードの裏から丸太の傍へやって来た兼続が静かに告げる。結局のところ、憂いを取り去った後でじっくりやり合う以外の道は無さそうだ。佐助が木箱の影から周囲の気配を探り、そのままサーフボードの裏へ戻って来る。
「向こうの砂の山付近に一組固まっているようです。女性だけの組を狙うのは少し気が引けますが、仕方ありません」
「丸腰ならともかく、戦に出た以上、女も男も関係ないだろ」
「そんな事言ってるけど徳川家康、お前凪の事撃てるのかよ?」
「………何でそんな事あんたに答えなきゃいけないわけ」
「こらこら二人共、戦場で仲間割れはやめなさい」
傍に居る組から各個撃破が基本だ。同性同士ならばともかく、女性を男が撃つのは正直気が進まないが、こればかりは仕方ない。家康が肩にアサルトライフルの銃身を置くような体勢を取り、呆れた眼差しを向けて来た。家康の凪に対する態度には、多少何か思うところがあるらしく、幸村が意外と鋭い問いを投げる。翡翠の眸を眇めた家康が無愛想に相槌を返すのを見て、秀吉が両者を穏やかに宥めた。