❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
家康が呆れた様子で否定を紡いだと同時、五人が即座に気配へ反応し、手にしている銃へ力を込めて身を翻した。駆け込んできた若い男が銃を構えるも、待ち構えていた家康が発射された一撃を軽々避けて、トリガーを引く。
「ぶっ!!」
男の顔面に噴射された水が見事にヒットし、彼がすごすごと悔しそうに退場して行くのを見やり、兼続が淡々とした表情のままで称賛を送った。
【残り三十二人ー!】
「家康殿、見事な一撃だった」
「どうも」
「次、来ます。数は二名」
アナウンスが響き渡り、それぞれサーフボードの影から一度周囲へ散った面々の内、木箱の影に片膝を着きながら佐助が警告を促す。一度ボードへ家康と兼続が二人並んで背を預ける形となった。微かに聞こえて来る足音を耳にして、兼続が正面へ向き直ると、ボード同士の隙間から銃口を向け、狙いをつけるとトリガーを引く。
「うわっ!?何処から撃たれたんだ!?」
「馬鹿、正面だ!」
【残り三十一人ー!】
別の障害物の影に隠れようとしていたらしい二人組の男の内、一人の脛に水がヒットする。即座にボードの隙間から銃口を引いて身を隠した兼続へ、佐助が軽く三白眼を見開いた。乱世で彼が銃を扱う姿は目にした事はないが、案外いける質だったのか。状況にそぐわぬ事を考えている内、脛を撃たれた男が虚を衝かれた様子で声を上げ、アウトになると隣の男が一度積み重なった丸太の裏へ隠れようとする。
「秀吉さん、裏です」
「ああ、任せておけ」
家康が男の逃げた先を視線で追い、ちょうど隠れようとしている丸太の反対側に居た秀吉へ声をかけた。身を屈めた体勢で居た秀吉が、どうにも慣れない黄緑色の派手なアサルトライフルを手に、けれど自信を覗かせつつ応えると、立ち上がってそれを構える。トリガーを思い切り引くと、圧縮式である水鉄砲の銃口が火を、否、水を噴いた。びしゃ!とけたたましい音を立てて相手の肩へ命中し、再び丸太の裏側へ身を潜める。