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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



「…おい佐助、本当にこの【ばす】とやらは大丈夫なんだろうな」
「どうして夜なのに箱の中が明るいわけ」
「これだけの広さのものを担ぐなんて、五百年後の駕籠者は凄いですね」

秀吉が実に胡散臭そうな面持ちを浮かべて周囲を見回す。バスの中は天井と足元にオレンジ色のライトが点灯していて明るい。行灯を幾つも点けない限り、ここまでの明るさというのは難しいだろうに、そんなものがある気配もない。三成は純粋に広さへ驚いているようだったが、そもそも駕籠者が担ぐ訳ではないという事をまだ認識していないようである。

「安心してください。運転さえ気を付ければバスは安全な乗り物です。走行中は騒がず、慌てず、座席から立ち上がらずにお願いします」
「佐助くん、ツアーバスのガイドさんみたいだね」

後部座席の真ん中に座りながら真顔で武将達を落ち着かせる佐助を見て、凪が可笑しそうにくすくすと笑った。楽しげな彼女の横顔を視界に入れ、光秀は内心で安堵する。結局のところ、五百年後であろうと五百年前であろうと、自分は凪が笑っていれば何処に居ても良いのだと実感したからかもしれない。

「彼方ーこっち」

ふと凪が光秀と繋いでいた手を離して片手を上げた。一番最後に乗って来た友人を呼んだ彼女が腕を下ろす。彼方は凪に呼ばれるまま通路を進んで後部座席へ近付き、光秀の反対側────つまり凪の左隣へと腰を下ろした。程なくして微かな絡繰りの音が響き、突如としてバスが微かに揺れる。エンジンがかけられたそれはやがて音を立てて何処かへ向かって走り出した。


凪の友人─────咲坂彼方は思った。この人達、どう考えても変だ、と。バスが動き出して程なく、凪の隣に座る光秀以外は驚いた様子で窓の外を見ていた。一定の間隔で流れて行く景色の何がそんなに珍しいのか分からないが、その反応は楽しげというよりも一部は何処か訝しみが込められている。

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