• テキストサイズ

❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



不意に背後から向けられる、隠しもしない視線を感じ取る。彼女の友人、彼方のものだと即座に察した光秀は、まるで探るような気配を孕んだそれへ内心で苦笑した。どうやら自分が一番友人に警戒をされているらしい。平和な世だと以前凪から直接耳にしたが、そういった警戒を女が持っているのは悪い事ではない。

(まあ実際には、警戒をされるような仲ではないが)

胸中で零したと同時、光秀の手を凪が自然な所作で握り、そっと繋いだ。さすがに恋人繋ぎではないものの、当たり前のように繋がれた彼女の小さな手が、二人の関係性を顕著に示している。彼方は驚いていた。注視されている先が、二人の繋がれた手である事など見ずとも分かる。促すように軽く凪が光秀を引っ張り、バスへ向かって行った。その小さく華奢な手に逆らう事なく身を任せて歩き出した瞬間、優しく指先に力を込める。再び驚きを露わにした彼方の気配を感じ取り、光秀は気付かれぬよう、そっと口元へ微かな笑みを浮かべた。

バスは四十五人席ある大型のものであり、運転席付近以外に補助席がないタイプのものである。バスのステップを踏んで中へ入ると、光秀は微かに驚いた様子で双眸を瞬かせた。座席のシートはモノクロで統一されていて実にシックな構造だが、如何せん武将達にとっては未知との遭遇というやつだ。ずらりと同じ形の座席が並んでいる様は奇妙であり、そしてこの広いバスの中で、何故か後方へ先に乗った武将達がやや固まって座っている様が実にシュールである。

「後ろの席でいいですか?」
「お前の好きなところで構わない」
「じゃあ広いし一番後ろに行きましょう!」

左右に二席ずつ並んでいるその中央通路を、手を繋いだ状態で一列になって進んでいった。途中で凪が振り返り、問いかけて来る。場所へこだわりなど特になく、凪へ委ねる形で返すと彼女はまたも振り返って楽しそうに笑った。バスの最後部座席は横一列で数人が悠々と座れるゆったりとした広めの席になってる。窓の外を見たいかもしれないと気遣った凪が、窓側の席を光秀へ譲ると、彼女はその隣へ座った。

/ 800ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp